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第23話

外に目をやると空は橙色に染まっていた。 「日が落ちるのが早くなったね。」 「そうですね。だいぶ拘束されましたからね。あそこの社長はタチが悪いですから。」 「仕方がないよ。営業部に任せたいところだけれど、あの社は俺でないと相手にしてさえももらえないのだから。」 「切ってしまえばいいのに。…面倒くさい。」 「おや、君らしくもない発言だね。云千万という金額が動くのだから易々とは切れない事くらい理解している筈ではないかい?」 「当然理解はしていますよ。私は彼が大嫌いですが、仕事相手としては好きです。愛想笑いをしていれば100%落ちますから。まさに、ボーナスステージというものですよ。」 「ボーナスステージ?」 「颯斗君がテレビゲームが好きなのでその影響ですかね。割りと面白いですよ。」 「…」 「社には戻らず、このまま貴方の家に向かいます。少し休んだ方がいい。倒れられては困りますから。」 「しかし、啓を三枝さんに預けたままなので迎えに行かなくてはならないし…」 「今日は私が彼を預かります。…颯斗君には申し訳ないですが、啓一郎君と彼は気が合いそうな気がします。貴方は帰宅し、ゆっくりと身体を休めるべきです。」 「ふふ、いつもならば働け働けと急かす君が、今日はとても甘いのだね。」 「気のせいではないですか?」 「では、そういう事にしておくとするよ。…啓を頼むね。」 「えぇ。丁度よい機会です。彼には少し躾が必要だと思っていたので。」 「俺も啓を躾るには君がうってつけだと思っていたところだよ。けれど、お手柔らかにね。啓はあまやかされて育ったので、厳しい事に慣れてはいないからね。」 「そうですか。では、慣れてもらうとしましょうか…」 折戸は本気のようだ。 先程から彼を取り巻く空気が変わったような気がする。 よい機会なのかもしれない。 車内が薄暗くなり、車が駐車場へと入っていった。 折戸が車を降りると後部のドアを開けた。 「嫌だな折戸。それくらいは自分でできるよ。」 「まぁ、一応秘書ですので。それとも、世話のやける上司の世話役と言い直しますか?」 「遠慮しておくよ。」 「部屋まで送りましょうか?」 「此処まででよいよ。このままでは本当に世話役になってしまうのでね。」 「では、私はこれで。ゆっくりと休んでください。」 折戸が背を向けて車に乗り込もうとした。 「折戸、ありがとうね。あとは、頼んだよ。」 家に帰ると、そのまま着替えもせずにベッドへと崩れた。 余程疲れているのだろう。 普段ならばこのような事はしない。 今朝まで蹴人と居たベッドだ。 確実にその場所に居た… しかし、今その場所は冷たく、残り香すらもない。 自ら冷たく放り出しておいて淋しがるだなんておかしな話だ。 一つ深い溜息をついて目を閉じた。

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