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第38話

少し落ち着いてから反省と恥ずかしさに襲われた。 大の大人が恥ずかしい… 昔から身体を壊すと胃腸にくる。 母に似て、俺は病弱だった。 すぐに吐いて下す自分が嫌で仕方がなかった。 自分が病弱だからあの人に愛されない… 身体の弱い俺を産んだから母も愛されない… 幼い頃の俺はそう思っていた。 大人になるにつれ虚弱体質は改善されたが、今でも体調を崩せばこの通りだ。 フラフラとお手洗いを出て、洗面所で口を濯いで顔を洗ってた。 寝室へ戻ると、もう蹴人は居なかった。 その代わりにベッドの前には仁王立ちをした折戸が居た。 「…黒木くんならば大学へ行きましたよ。今日はバイトがあると言っていたので、おそらく夜は来ないかと…」 「そうか…」 「看病をする相手が私では不満ですか?今、あからさまに嫌そうな顔をしましたね?」 蹴人が居ない事は少し残念だけれど、あのような事の後のせいか少しホッとしたのも事実だ。 「不満だなんてとんでもないよ。折戸は此処の事はとちつもよく把握しているから、看病をしてくれる相手が君ならば安心できる。」 俺はベッドに戻って身体を横たえた。 怠い… とても眠い… 目を閉じれば直ぐにでも眠ってしまいそうだ。 「総一郎、眠る前に薬を飲んでください。啓一郎くんを送るついでに薬を貰ってきましたので。」 「…ありがとう。とても助かるよ、折戸…」 「あと、啓一郎君がヒステリーを起こして大変でした。労って欲しいのは私の方です。」 「…ごめんね。兄弟で迷惑をかけてしまって…」 俺が苦笑するとまったくだ…と言いたげに折戸が俺を見た。 薬を水と共に手渡されると俺は少し身体を起こしてそれを飲んだ。 「本当にそう思っているのなら、一刻も早く風邪を治してください…」 「…うん、そうだね。…ねぇ、折戸…少し休ませて…」 再度身体を横たえ目を伏せた。 折戸の冷んやりとした手の感覚を額に感じながら眠りに落ちた。

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