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第40話

俺の上で荒い呼吸を繰り返す蹴人をそっと撫でた。 また怒らせてしまうだろうかとも思ったけれど、抵抗する力もないのか大人しく撫でられていた。 「…はぁ、…平気、かい?…」 「…はぁ…はぁッ…お前…こそ…」 まさか蹴人からこんな言葉をかけてもらえるとは思ってもみなかった。 俺を心配をしてくれている… 嬉しくて心が温かくなった。 「…平気…だと思うよ、多分だけれど…」 「オッサンのクセに…」 「…ふふ、酷いなぁ…」 「…無茶して…風邪の時にセックスとか…死ぬぞ、オッサン…」 「こーら、…気にしているのだから…歳の差の事はもう言わないで…それにね、俺に無茶をさせたのは、君だよ?…」 「…」 「目が覚めたら君が居て…しかも、あのような可愛らしい事をしてくれていたのならば、応えないわけにはいかないよ、男としてはね…」 「なんだ、それ…」 「…単純に、今こうして君が居てくれている事が嬉しいのだよ…本当はもう少し可愛がってあげたいところなのだけれど、ごめんね?…今日はもう…限界のようだ…」 「…黙れ…病人は黙って寝てろ…なに勝手に起きてッ…んンッ…」 蹴人のナカから俺のモノを抜くと蹴人が小刻みに身体を震わせた。 「…蹴人、君はシャワー浴びておいで。」 情事後に意識を失わない限りは、まるで全てをなかった事にするかのように蹴人はすぐにシャワーを浴びる。 今回もそうなのだろうと思い声をかけた。 「いや…もう少し、休む。」 意外な返答だ。 普段と違った態度をとられると不安になる。 嬉しいと素直に感じたいが、複雑だ。 「そうかい?」 「あぁ。…つかお前、どこから気づいてた。」 「秘密。…怒られてしまいそうだからね。」 「まさかお前ッ…!」 「ふふ、言わないよ。」 勢い良く飛び起きた蹴人に、まるで最初から起きていたかのようなフリをした。 すぐに腹を立てる少し短気な蹴人も、些細な事にムキになり反抗してくる蹴人も、全てが可愛らしく、愛おしい… 自然と笑みが零れた。 「…腹立つ。」 「…腹が立つだけかい?」 「…ッ…」 「ねぇ、蹴人…どうなのだい?…」 「黙れ…」 「…蹴人。」 「しつこい。」 「…本当に強情だね、君は。」 「強情で悪かったな。」 「…好き。蹴人のそのようなところも全て…愛しているよ。」 「バッカ、こっ恥ずかしい事…言うな…」 蹴人の気持ちをそろそろ聞かせて欲しい… 嫌いなら嫌いで、そのように伝えてもらわなければ期待してしまう… 「蹴人…君は、どうなのだい?」 「…黙れ。」 「…ねぇ蹴人、君は俺の事を…」 「だから黙れ。…シャワー借りる。」 蹴人は逃げるようにヨロヨロとした足取りで寝室を出て行ってしまった。 俺は、少しの間その場を動かずにいた。 身体が少し楽になった気がする。 薬が効いたせいなのか、汗をかいたせいなのか… どちらかは分からない。 蹴人は暫く出てはこないだろう。 俺は、サイドテーブルの上のティッシュボックスから2、3枚ティッシュを抜くと簡単に処理を済ませ、ゴミ箱に捨てた。 その後、置いてあった洗面器の中のタオルを絞り、身体を拭いた。 身体を拭くに留めた理由は、多少は楽になったとは言え、シャワーの熱に打たれればまた気分が悪くなりそうな気がしたからだ。 少しすっきりとしたところで、汗で汚れた服を取り替えた。 乱れたシーツに白濁に混じって色の薄くなった血液の跡を見つけた。 おそらくは、蹴人が無茶をした時のものだろう。 無傷ではないだろうとは思っていたけれど、ここまで無茶をしていただなんて… 汚れたシーツと衣類を持ち洗面所ね向かった。 シーツを軽く水洗いし、衣類と共に洗濯機にいれ、寝室へと戻った。 糊の利いた真っ白な新しいシーツに敷き替えた。 体調が万全ではないせいだろうか、流石に疲れを感じてベッドに腰をかけた。

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