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第42話
今にも崩れてしまいそうな蹴人を支えて引き寄せた。
「はぁはぁ…は、ぁ…」
「蹴人…愛しているよ…」
「先程の行為も悪くはなかったのだけれど、俺は自分の手で君に気持ち良くなってもらいたいのだよ。」
俺の手で、グズグズなるまで愛でて…
俺が触れている事を理解させて…
そうでなければ、俺は満足ができない。
「は、ぁ…ッ…黙れ…」
熱を孕んだ目に睨まれたところで効果はない。
全ての処理を済ませた後、傷口に薬を塗ってあげた。
蹴人は、触れるたびに身体を震わせた。
意地悪をしてしまった分、その後のケアは怠れない。
いつもよりも優しく…
そして、丁寧に…
全てが終わった後…
あの日、伝えられなかった言葉を囁いた。
「…蹴人、いい加減に俺を好きになりなさい。」
今度こそ届くように…
伝わるように…
耳元で甘く囁いた。
蹴人は黙ったままだ。
沈黙が俺を不安にさせた。
「黙れ…」
「…君の答えを聞かせてはくれないのかい?」
遠慮がちに凭れていた蹴人の身体が俺に密着し、重みを感じた。
蹴人なりの返答…
不器用な蹴人の精一杯…
とても可愛らしい事をしてくれる人だ。
後ろから包み込むように蹴人を抱き寄せた。
「今は許してあげるよ。けれど、いつかは…君の気持ちが定まった時にはきちんと聞かせてほしい…」
「…知るか。」
「ふふ、強情だね。」
「…黙れ。」
俺は、このような蹴人とのやりとりがとても心地好いと感じる。
蹴人との時間は、なによりも愛おしく大切なものだ。
いつにも増して、そのように感じた。
そして、暫くの間お互いの重みと熱で気持ちを通わせ合った。
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