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第12話

いつまでもそんな事を考えていたって何も進まない事は分かっている。 認めなきゃならない事も分かっている。 でも、それが上手く出来ないから困っている。 俺は出会った時から八神に流されまくっている。 今更流されるななんて言われても困る。 でも、八神は大事な部分は全部俺に選ばせている。 ズルいヤツだ… 考えてみると、今回に限らず今までもそうだった。 指先で八神の顎を上げて唇を押し付けると八神は当たり前のように唇を開いた。 舌を絡めて、軽く吸い上げてからゆっくり唇を離した。 「…なんか…お前より俺の方ががっついてるみたいで腹立つ…」 「…ふふ、そうなのかい?」 「…なんとなく、お前は変わった気がする。」 「この数ヶ月で君も変わったように感じるけれど…」 「そうか?」 「若さというのは恐ろしいね…」 「お前、まだそんな事言ってんのか…」 俺が呆れたように言うと、八神は苦笑した。 「本当に気づいていないのかい?この数ヶ月で蹴人は凄くよい男性になったよ。」 「数ヶ月もなにも、俺はずっといい男だ。」 八神と目が合って、伸ばされた指先が俺の頬をくすぐった。 「そうだね。」 「バカ、そこは突っ込むとこだろ。」 八神がおかしそうに笑った。 それを見て俺も自然と笑った。 こういう何気ない時間は嫌いじゃない。 包まれるような穏やかな時間… むしろ気に入っている。 「ねぇ、蹴人…」 「ん?」 「好きだよ…とても…」 「なっ…」 「蹴人の…君の全てが欲しい…」 「ったく、お前は…」 俺はソファーに深々座り直して天井を見上げた。 俺がはっきりしないせいだ。 八神が欲しがりなのは、全部俺のせいだ。 分かっている… 分かっているけど、最後の一歩が踏み出せない。 踏み出し方が分からない。 そんな俺が、ストレートに気持ちを言える訳がない。 俺はずっと同じ場所から動けずにいる。 ずっと同じ事を考えて、同じ事を悩んでいる。 頭がグルグルして余計に訳が分からなくなった。

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