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第15話
落ち着かない…
自分が何に対してモヤモヤしてるのかが分からない。
居心地が悪い…
「黒木さんと仰ったかしら?…総一郎のお友達にしては…」
「由莉亜、あまり彼をジロジロと見るないでくれないかな。彼が緊張してしまうよ。」
八神がそう言うと俺の腕を掴んで引き寄せた。
「あらあら、随分と仲がよろしいのね。」
君島さんが口元に手を添えて上品に笑いながら八神を見た。
変な勘違いをされても困る。
別に俺と八神は…
俺は八神から慌てて離れてた。
「あー…なんかいつもこんな調子で…深い意味は…」
とりあえず適当に誤魔化す為の言葉を並べたが、それらは明らかに不自然だった。
「まぁ、総一郎が?」
君島さんが少し驚いた様に俺を見た。
「そうなんですよ。ホント、困ってます。」
君島さんの表情と声色でなんとなく墓穴を掘ったんだと分かった。
隣の八神に視線で助けを求めたが、そらされた。
「…由莉亜、申し訳ないけれど、やはり今日はこのまま帰ってもらえないだろうか…」
「本当にどうしたというの?今日の貴方、少しおかしいのではなくて?いつもは感激してくれるじゃないの。」
「彼と大切な話があるのでね…お願いだよ、由莉亜。」
「それは、久し振りに会った婚約者の私とのお話よりも大切なのかしら?」
婚約者…
八神に婚約者が居ても不思議ではない。
急に心臓がうるさくなったのを感じた。
「お嬢様。総一郎様の都合も伺わずに来てしまったので今日のところは出直しましょう。」
「悪いね、向井くん。後日改めて連絡するよ。」
「部屋も予め抑えてありますのでご心配なく。それでは失礼致します。…さぁお嬢様、参りますよ。」
いつの間にかキッチンから戻った向井さんが八神に頭を下げて、なにか言いたげな君島さんを引いて部屋を出て行った。
しばらくして、玄関の扉が閉まる音がした。
多分、時間にすればほんの短い時間の出来事だろうが、俺にはその数秒が凄く長く感じられた。
「…蹴人、先程の発言はどういうつもりだい?」
「どういうって、俺はお前の為に…」
「俺の為…ね。俺はそのような事は望んでいなかったのだけれどね。…本当に俺の為だったのかな?…」
八神がソファーに浅く座って俺を見た。
その声も、俺を見る目も冷たく感じた。
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