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第18話

今このように隣に居てもらえるというだけでも有り難いと思わなければならない。 しかし。それ以上の事を望んでしまう。 「…君は若いからよいかもしれないけれど…」 母にも… 当然俺にまったく興味のないあの人にもその様な事をされた事はない。 蹴人はこうして… 俺を正してくれる存在だ。 蹴人でないと… 俺は駄目になる… しかし、蹴人と居ても… 俺は駄目になる… 一体どうしたら良いのだろうか… 「俺には関係あるよ。…少しでも長く、君と居たい…」 「だからこうして一緒に居るだろう。」 「…足らない。」 「黙れ。」 「本当に、全然足らない…」 「バカ野郎…」 俺は蹴人の胸に抱き寄せられた。 「……蹴人?…」 「お前は黙ってろ…」 このような事をされては甘えてしまう。 けれど、今は甘えていたい。 俺を甘やかしてくれるこの胸は、折戸の指先とは違う。 甘やかし、傷付ける… けれど、どんなに傷付けられても離れようなどとは、考えいられなあ。 「…ねぇ、蹴人。」 「だから黙れ…」 「…はい。」 蹴人を前にすると。俺はまるで子どものようだ。 「…おい。」 「…なんだい?」 「…少しなら…考えてやらん事も…ない…さっきの…」 顔を上げ蹴人を見ると、蹴人は思いもよらない事を口にした。 それと同時に不安が押し寄せた。 あまりにも蹴人らしくない言葉だ。 「急がなくてもよいよ。ゆっくりと考えてほしい…」 「…待てないだのゆっくりだのどっちだ。ホント、わっけわからないヤツだな、お前は。」 「きちんと考えて決めてほしいからね。君の意思で、俺に流される事なく…」 「…もう黙れ。」 「…」 流されているのは俺の方だ。 蹴人の言葉を全て間に受け、一喜一憂する… なんて情けない… 蹴人と居る事が幸せであり、苦しい… そのような自分が情けなくなった。

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