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第19話

そのような情けない俺をも蹴人は受け入れてくれる。 俺は複雑な気持ちのまま目を伏せた。 蹴人の指先が俺の顎を上げ唇が触れた。 薄く開き蹴人の舌を受け入れた。 舌を絡め取られ、それを吸われて誘い込まれたが、ゆっくりと唇は離れて行ってしまった。 「…なんか…お前より俺の方ががっついてるみたいで腹立つ…」 最近の蹴人はとても積極的だ。 快楽に溺れたいという事だろうか。 溺れているのは常に俺の方だ。 誰も助けになど来ない深く暗い漆黒の海で無意味に身体をバタつかせている… 「…ふふ、そうなのかい?」 「…なんとなく、お前は変わった気がする。」 「この数ヶ月で君も変わったように感じるけれど…」 「そうか?」 「若さというのは恐ろしいね…」 「お前、まだそんな事言ってんのか…」 然程弟と年齢が変わらない蹴人を愛してしまった。 その年齢差がどれ程重いものかは理解していた筈だ。 これから先、蹴人は益々… そのように思い苦笑した。 「本当に気づいていないのかい?この数ヶ月で蹴人は凄くよい男性になったよ。」 「数ヶ月もなにも、俺はずっといい男だ。」 まったくその通りだ。 知れば知る程にそのように感じる。 俺には勿体無い… 蹴人を見上げると目が合い、みるみる吸い込まれていく… 堪らなく苦しく… 堪らなく愛しい… 俺は伸ばした指先で蹴人の頬を撫でた。 「そうだね。」 「バカ、そこは突っ込むとこだろ。」 俺の気持ちを他所に相変わらずな蹴人に思わず笑ってしまった。 そして蹴人も笑った。 同じ時間を共有し、笑い合う… そういった時間に幸せを感じる。 「ねぇ、蹴人…」 「ん?」 「好きだよ…とても…」 「なっ…」 「蹴人の…君の全てが欲しい…」 「ったく、お前は…」 俺は欲しがりなのだろうか… 蹴人はソファーから腰を上げ座り直すと何かを考え込むかの様に天井を見上げた。 呆れさせてしまったのだろうか… 不安が押し寄せた。

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