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第24話

蹴人は、俺の言葉を飲み込めずにいるように見える。 「どういう意味だ…」 「本当は、自分の為のものだったのではないのかい?」 「違うッ、俺はお前の…」 静まった部屋に音が響く。 強いストレスを感じているのだろう。 蹴人が、親指の爪と人差し指の爪を弾いていた。 「俺の…なんだい?」 「だから、それは…」 なぜはっきりと言わない… それでは俺はなにも理解出来ない。 「…蹴人、君は俺の事が嫌いかい?」 「…ッ…」 「黙っていては話にならないよ、蹴人。」 「…ん…ない…」 蹴人の声が聞き取れない。 声が小さいのか、俺が聞く事を拒んでいるのか… 「…」 「…分かんないって言ってんだ!」 蹴人の声が震えている。 こんなにも追い詰めたのは俺だ。 「いつになれば分かってくれるのだろうね、君は…。…俺はいつでも伝えてきた筈だけれどね…」 「もう…もう沢山だ…」 「…」 「こんな訳分からないのは、もう沢山だ!!」 今すぐに抱き締めてあげたい。 俺の手でグズグズに甘やかしてしまいたい。 けれど、それはだけが愛ではないのだろう。 時には突き放す事も愛なのだろう。 後ろを向いてしまった蹴人を放っておく事など、俺に出来る筈もない。 後ろから蹴人を抱き締めた。 「ごめんね、少し追い詰めすぎてしまったね…」 「離せッ…」 「蹴人、逃げ出すのは狡いよ…」 蹴人は狡い… 俺が手放せない事を分かっているのだろう。 逃げ出そうとすれば、このようにして俺が引き留めるのだと… 無意識の理解なのか、意識的な理解なのかは、俺には分からない事だけれど…

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