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第29話

由莉亜に頼まれてこうして君島の家に来たはいいが、俺が居なくとも解決できた問題かもしれない。 そもそもおじ様と由莉亜の間には上辺だけではない親子の関係が出来ている。 由莉亜はおじ様を尊敬しているし、おじ様も由莉亜を深く愛している。 俺とあの人とは違うのだ。 「…総一郎君、私はね、君が言っていた事を理解はしているよ。ただ、今の事実を受け入れられなかった…。首が回らなくなった挙句に由莉亜にも出て行かれてしまって…。君にも迷惑をかけた…」 「僕はいいのですよ。生意気を申しまして…すみませんでした…」 「止めてくださいな、総一郎さん。謝らなくてはならないのは私共の方ですわ。総一郎さんまで巻き込んでしまって…。ありがとうね、総一郎さん。私では二人をまとめられなかったもの。」 おば様は二人の板挟みになっていたのだろう。 「いえ、僕が居なくともお互いが素直になれば解決出来ていたと思いますよ。親子で積もる話もあるでしょうし、僕はこれで失礼致します。」 「そうはいきませんわ。お夕飯、召し上がって行ってくださいな。」 「いえ、そんな。申し訳ないです。」 おば様の強い引き留めにより、俺は君島の家で夕食を摂る事になった。 おじ様は何かが吹っ切れたように見えた。 由莉亜もおじ様もお互いに素直になれなかっただけだ。 冷静に話せていたらもう少し早く解決出来た。 俺が少しでも二人の関係修復に役立てたのならばなによりだ。 しかし、精神的にはとても疲れた。 君島の家の玄関を出ると由莉亜が追ってきた。 「総一郎、今日は本当にありがとう。感謝するわ。」 「俺は何もしていないよ。」 「そんな事はないわ。今日の貴方、とても素敵だったもの。惚れ直したわ。」 「ふふ、また冗談を…。結局、ヒールには成りきれていなかったからね。」 「確かにそうね。けれど、貴方らしい悪役だったわ。」 「ありがとう。今度こちらに帰って来る時は、彼を紹介してくれるかい?」 「もちろんよ。貴方もきちんと黒木君を紹介しなさいよ?」 「…そうだね。そうしたいのは山々だけれどね…。…痛ッ!」 由莉亜に激しく背中を叩かれた。 「しっかりなさいっ!!」 「…なにも叩く事は…」 「こうでもしないと貴方、ウジウジウジウジするじゃないの。きちんと仲直りしなくては駄目よ。手放したくないのでしょう?」 「…そうだね。彼程愛おしく、可愛らしい子は居ないよ。この先、彼以上の人には出会えないと思うからね…」 「思う?」 「いや、出会えないよ。」 「ふふ、ご馳走様でした。そうだわ、総一郎。黒木君に謝っておいてちょうだいね。」 「伝えておくよ。」 「私、明日戻る事にするわ。貴方の話を聞いていたら彼に会いたくなってしまったから。」 「そう。では見送りに行くよ。」 「あら、でも貴方、きっと明日は来ないわ。」 「なぜ?」 「女の勘…かしら。」 「困ったな、由莉亜の勘は昔から良く当たるからね。」 「では、私は戻るわね。お父様とお母様と話さなくてはならない事が沢山あるの。」 「そう。…由莉亜、良かったね。」 「えぇ、ありがとう。」 「身体に気を付けてね。」 「貴方も。…総一郎、貴方は私の最高の親友だわ。」 笑った由莉亜は、とても綺麗だった。

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