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第41話

蹴人を抱きしめたいと思った瞬間、何かが音を立てた。 その音はとても聞き慣れた音だ。 可愛らしいとは程遠い… けれど愛おしい音… 俺は思わず笑ってしまった。 「なんとも、君らしいね。」 「だ、黙れ。仕方ないだろ、これこそ生理現象だろ。」 「朝食にしようか。」 「俺、動けない…」 「お持ち致しますよ、お姫様。」 「死ね。誰が姫だ、誰が。」 「すぐに戻るから待っておいで。」 俺は蹴人の額にそっとキスを落とし、ベッドから降りた。 「つかお前、その甘勃ちしたやつはどうするつもりだ。」 先程から俺のモノ下着の中で反応を示し、質量を増していっている事は感じていた。 正直なところ、とても辛かった。 当然の事で何も不思議はない。 愛おしい人に身体を密着させて触れていればこうなるに決まっているのだから… 「え、あ、うん…その内戻るよ。」 「甘勃ちとか辛くないか?」 「辛くないと言っては嘘になるけれど、大丈夫だよ。」 「…その、挿入れるのは厳しいけど、ヌくの手伝うくらいはしてやる。」 本当に今日の蹴人は… 俺の喜ぶ事ばかりしてくれる。 嬉しい筈なのに苦笑してしまった。 「君は…本当に…」 「な、なんだ…」 「可愛らしいね。」 「黙れ。…で、どうするんだ…」 「どうって…」 思わず照れてしまった。 この先の行為は理解している。 しかし、言葉にされてしまうとどうにも恥ずかしい… 「あーもう、面倒くさい!」 しびれを切らした蹴人が服の上から俺のモノに触れた。 「…ッ…」 「なぁ…どうして欲しいんだ?言ってみろ…」 あまりの恥ずかしさに顔が熱くなった。 「…俺を、楽にして…」 気付けばそのようなはしたない言葉を発していた。 「了解。」 蹴人が触れた事で下着の中はさらに窮屈になる。 それに気付いた蹴人は、ベルトを緩め、チャックを下すとボタンを外した。 その手に迷いはなかった。 ズボンと下着が下されると解放された俺の擡げたモノが飛び出した。 その勢いさえも快感だ。 そして、俺のモノを握り込み、緩やかに扱く。 「…ッん……」 思わず漏れた声に恥ずかしさを覚え、口元を手の甲で押さえて声を殺した。 「こんなにしといてその内治るって?」 「…っン……君が、触れたから…だよ…」 今俺の前に居る蹴人は俺の知る蹴人ではない… その事が更に俺を恥ずかしくさせた。 「声、聞かせろ。隠すな。」 「…恥ずかしい…よ…」 「今更だろ。俺に毎回恥ずかしい思いをさせといてよく言う…」 俺のモノを包み込み、先端から溢れ出るモノを絡めながら扱かれると堪らず押さえた隙間から息が漏れた。 「…ふ…んン…ッ…」 「たまには、俺にも遊ばせろ…」 蹴人は俺なんかよりもとても男らしい。 そして、とても素敵だ… 俺の知らない蹴人に、改めて恋をしてしまったような感覚に陥った。 ふと蹴人が俺の手を掴みベッドへと引いた。 「…ッ…」 咄嗟に閉じた目を開くと蹴人が俺を見下ろしていた。 蹴人に組み敷かれている… 気付くまでに時間はかからなかった。 蹴人が今見ているのは今迄の俺が見てきた景色、俺が今見ているのは今迄蹴人が見てきた景色… 「なかなかいい眺めだな。お前の顔がよく見える。…俺はこの顔か嫌いじゃない。」 そう言うと蹴人は舌舐めずりをしてみせた。

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