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第46話
翌朝、目が覚めると隣に愛おしい人の寝顔があった。
写真の中の寝顔よりも可愛らしい天使のような寝顔だ。
一度目を覚ますと恐竜のような彼…
俺は幾度となく吠えられ噛み付かれてきた。
ギャップすらも可愛らしい…
俺は猫っ毛をクルクルと指に巻き付け遊んだ。
それは決して離れる事なく巻き付いてくる。
俺から離す事がなければ、永遠に巻き付いたままだとすら思える。
一頻り遊んで満足した俺はベッドから這い出ようとした。
そして気付いた。
蹴人の服が着崩れている事に…
なんとも良い具合に…
隣に居る相手が俺でなかったとしたら…
「…いけない子だね。」
苦笑しながら着崩れた衣服を整えようとした時、指先が蹴人の肌に触れた。
「…ン…」
その口元から漏れた甘い声と、誘うような身動ぎ方…
本当に…
「無防備…」
俺でなければとても危険だ。
いや、俺であったとしても…
俺はゆっくりと蹴人の衣服をたくし上げた。
出会った当初よりもやらしくなった身体に息を飲んだ。
俺がこのようにしたのか…
蹴人がこのように育ってしまったのか…
それは正しく抱かれている人の身体付きだ。
あまりセックスに関心のなかった俺でも分かる程だ。
「…困ったね、悪戯をしたくなってしまった…」
スルスルと指先を肌に這わせた。
這い回る度に漏れる吐息…
それは俺を悪戯な気分にさせる。
露わになったお腹から胸のにかけてキスを降らせた。
もちろん、唇や舌が這った場所に薄く、ところどころ強く吸い上げ痕を残した。
おへそを舐めるとビクビクと敏感に反応した。
「そう…蹴人はこの場所も感じるのだね。可愛らしいね…」
その後、鎖骨に首筋…
隠せないような場所にも痕を残した。
ある種、肌に残した魔除けの印と言っても良いかもしれない。
多分、その効果は絶大だ。
人前で裸を晒す事が出来ない程のキスマークを前に、俺は満足感を覚えると、乱れた衣服を整え、ベッドを離れた。
洗面所で朝一番の一連の支度を済ませる。
シャワーで簡単に身体を流し、玄関から溢れんばかりの量の新聞を取るとリビングへ向かった。
普段ならばこのまま新聞を開くところだけれど、昨日の夕飯を簡単に済ませてしまった事を反省し、朝食は真面目に作ろうと決めていた。
俺は新聞を机に置き、キッチンに立った。
メニューを考える…
ただそれだけの事が楽しい。
蹴人は何を出しても美味しそうに食べてくれる。
その顔を見ているだけで幸せだ。
いつも洋食ばかりだ。
今日は和食を作る事にした。
温かいご飯にお味噌、おひたしに煮物…
自然と包丁がリズミカルな音を立てた。
暫くすると蹴人が起きてきた。
「おはよ…」
「おはよう、蹴人。もうすぐ朝食が出来るから顔を洗ってスッキリとしておいで。」
「んー…シャワーも借りる。」
断りなど入れずに好きに使ってくれて構わないのに…とお味噌の味見をしながら思わず苦笑した。
出来上がったものを器によそって食卓に並べた。
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