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第7話

そんな日々が続いたある日。 『土曜の十三時にここに来て』  天子からそうメッセージが送られて来たかと思うと、直ぐに住所が送られてくる。 『その時に、この間のファミレス代。持ってきてね』  やっと解放される。俺は了承するメッセージを送り、この住所が何なのかを翌日知る事になる。  最寄り駅から歩く事、十五分。天子に言われた住所にはでっかいマンションが建ち、指定された部屋番号のインターフォンを押すと、さして待つことなく扉の向こうから天子が現れる。 「いらっしゃい」  初めて見る天子の私服。俺と同じようなジーパンとティーシャツなのにカーディガンを羽織っただけでオシャレに見える。  いや、俺が着てるネルシャツも天子が着ればオシャレに見えるんだろう。そして足元には見慣れた靴が幾つも並び、その脇にはパンプスやビジネスシューズ。 「天子、ここって……」 「僕の家だけど?」  天子が送ってきた住所に、まさかとは思ったが紛れもなく天子の家だった。そう気がついた途端、身体中に緊張が走る。 「茂木くんなら、知ってるかと思った」  そう言いながら近づいてくる天子の顔に、変な汗が吹き出す。 「いや、俺。跡をつけたりはしてなくて……」 「ふうーん。そうなんだ」  固まったままの俺の耳元で天子はそう言うと、俺の手からコンビニの袋を取り上げる。 「あっ、これ。気になってたやつ」  そう言って天子が手にしたのは期間限定と書かれたクッキー。  ここに来る途中、適当に飲み物とかを買ってこいと司令が出された。よく飲んでいる無糖の紅茶と、塩っぱいものより甘い物を好んで食べているから、それを目安にいくつかチョイスしてみた。 「流石は茂木くん。僕の好きな物ばっかり」  笑って嫌味を言う天子に何をされるのか。この間は人目もあったから、たかられる程度で済んだ。 「天子、親御さんは?」 「居ないよ。僕と茂木くんのふたりっきり」  そう言って天子はクスリと笑う。 「早く上がりなよ」  このまま玄関に金を置いて帰りたかった。天子がそんな事するとは思えないけど、殴られたりしたらどうしよう。そう思うと足がすくんで動かない。 「茂木くんが返してくれたシャーペン。他の皆にも探して欲しいって言っちゃったんだよね。まだ、見つかった事話してないんだけど。見つかったって言っていいかな?」  それは俺がしてきた事を皆にバラすと言う事。 「それは……」 「嫌ならついて来て」 「……はい……」  天子の部屋は廊下を曲がって直ぐにあった。室内には目の前に勉強机と右側にベッド。そのベッドには、この間俺が取ったぬいぐるみが置いてあり、左側にはテレビやオーディオ類がまとめて置いてある。その真ん中にはローテーブル。俺の部屋と配置は殆ど変わらないのに、どうしてこんなに印象が違うのか。 「茂木くん、ここ座って」  テーブルの上に飲み物とお菓子を広げる天子は、ベッドの前にあるクッションを叩き俺を促す。俺が動いたのを確認してからレンタルビデオ屋の袋から一枚のディスクケースを取り出し、それをレコーダーに入れた。

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