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おかしな身体
水の底から浮かび上がるみたいに意識が急浮上する。
瞼を開けるとまず目に入ってきたのは真っ白い壁。眩しくて思わず目をすがめる。目を細めたまま首を回して辺りを見回す。
知らない部屋だ。白い壁に高い天井までは昨日までいた部屋と同じだけど、天窓はない。ベッドはかなり大きくて、そのシーツは寒々としたミント色で統一されている。それに、眩しいのは大きな窓があるからだ。昨日までいた部屋とは、光度が全然違う。
むくりと身体を起こす。かけられていた布団が落ちると、俺は何も身につけていなかった。下も、何も身につけていない。
意識を失う直前の記憶を呼び覚まして、そう言えば裸だったなと思い起こす。
そのもう少し前を思い出すと、俺はあいつとヤって、そのもっと前には「恋人」になると約束したんだった。
恋人………。
バカじゃねえの。
俺とあいつが恋人?俺があいつを好き?
そんなのある訳ない。本当、ばかみてえ。
「愛由、おはよう」
そう思っていたのに。
絶妙なタイミングでやってきた天城に「朝ごはんできてるよ」と言われたら、俺の反発心は簡単に萎れて、頭の中はご飯のことでいっぱいになる。
「いま、行く」
そう即答して、またシーツを身体に巻き付けてよろよろと天城を追った。この部屋のドアは普通の木製のドアで、鍵も見当たらない。部屋を出て廊下を通り、玄関のある吹き抜けの階段ホールを抜けると、リビングに繋がる大きなドアがある。昨日逃げようと必死で走ってきた道のりを、今度は自分の意思で逆走して歩いているのがなんとも滑稽だと思う。
「今朝はお粥だよ」
お粥か……。昨日食べた殆ど液状のお粥も、おいしかったなぁ。けど………出来ればもう少し腹に溜まるものも欲しい。お腹がふくれるくらいパンパンになって「もういらない」ってだけ沢山食べたい……。せめて、今天城の前に並べられてるパンとハムと玉子とチーズが食べたい……。
「まだだめ。俺は愛由の身体を思って言ってるんだよ」
こいつ、曲がりなりにも医者だもんな。言うこと聞いてた方が身の為なのかな………。
お椀一杯分のお粥はあっという間になくなり、何もする事のなくなった俺は目の前に座る天城が美味しそうにパンをかじる姿を見るしかない。
「愛由が俺の言うこと聞いていい子にしてたら、体調も回復してパンだって何だって食べれる様になるからね」
そうか。言うこと聞いてれば、いつかお粥以外も食べられるんだ。昨日食べたアップルパイもまたくれるかもしれないし、いい子にしてないと……。
天城がパンを食べ終えて、食器をキッチンに下げる様子をぼんやりと眺める。手伝った方がいいのかな。でも俺フラフラするから、途中で皿を落として割ったりしたら大変……。
そんな事を考えている内にテーブルの上はテキパキと片付けられて、まだ椅子に座ったままだった俺の背中側から腕が回ってきた。
「愛由、今日も好きだよ」
椅子越しに後ろから抱き締められて髪の毛にいっぱいキスされる。髪の毛なんて感覚がない筈なのにどうしてだか身体が熱くなる。
「ん……」
顎を掴まれ後ろを向かされて、唇が塞がれる。ちゅくちゅくと舌が絡む度にいやらしい音がして、気持ちがよくて、もっと身体が熱くなる。
シーツを胸元で掴む俺の手はいとも簡単に剥がされて、はだけたシーツの間から別の手が侵入してくる。
「ン……あ……」
突起をツンツンと指で弾かれて、下半身の疼きは誤魔化しようがないくらい強くなる。
「えっちな愛由。すぐ勃っちゃうんだから」
指摘されて恥ずかしくて隠そうにも、もうシーツは椅子の下に垂れている。
「ベッドに行こうね」
横抱きに抱えられ、今朝目覚めた部屋まで連れていかれた。そっとベッドに横たえられると、当然の様に上に天城が覆い被さる。
「っ……」
首もとに舌が這って、敏感になっている肌がざわざわする。それからそこを強く吸われて少しちくっとした。
「愛由は色白だから、はっきり跡がつくよ」
所謂キスマークというやつだ。高校生の時、土佐が彼女につけられたとかでクラスの奴等にからかわれていた。
―――――土佐……。
「ん……っ」
「やっぱりここ好き?」
大事な事を思い出しかけた気がするのに、乳首を口に含まれ刺激されて、さっき考えた事は頭の隅に追いやられてしまう。
「や……それ……っ」
「愛由の可愛いここは、嬉しいって言ってるよ」
勃ち上がった下腹部の先端が濡れているのを触って指摘される。どうしてこんなに………。
「それはね、愛由が俺の事好きだからだよ」
好きじゃなきゃ、こんなに気持ちよくないよ。
そう囁かれながら下を扱かれたら、待ってましたとばかりに俺の身体は快感に溺れた。だって気持ちいい。他の誰にされたこれよりも、一番に。
「……もっと………」
「うん?もっと強く?」
「……やさしく……、ぬるぬるって………」
「ああ、ローションつけて欲しいの?それじゃあ今日はこれでどう?」
手が離れたと思ったら、すぐに温かいものに包まれる。確かめようと瞑っていた目を開けたら、天城の頭が股の間にあった。
「や、だぁ……っ」
ぬるぬるの熱い口内に包まれて、頭が上下する度に下腹部が甘く痺れる。恥ずかしいのに、もう誤魔化しようのない程に、気持ちがいい……。
「ンんっ……だ、め……だめ、だめ……」
「こっちにも欲しくなってきた?」
もう出ちゃいそうだったけど、イき果てる前にそこは解放された。代わりに、股をもっと広げられて、後ろの穴が一瞬熱くなって、そしてすぐに冷えた。
「な………っ」
舌が這っていた。そこを。そんな所を。
「やめて……っ!」
きたない。―――そこを舐めさせられるのは、最低な気分だった……。
「汚くなんかないさ。ここ、愛由の匂いが濃くてすごくえっち……」
そんな所で深呼吸までされて、羞恥のあまり絶句した。自分でも見たことのない所を至近距離で見られて、舐められて、臭いまで嗅がれて……。
そのままそこはびちゃびちゃに舐められ、呆然としている内に指で慣らされるのも終わって、昨日と同じ様にゆっくりと性器を挿入された。
「ふ……あ、あぁ……っ」
昨日同様初めは痛かったのに、徐々に痛いだけじゃなくなってきた。モヤモヤして、もっとってねだりたくなる様な……。
「すごく絞まって気持ちいいよ……っ」
目の前にはうっとりとした顔。ふと思った。このままキスしたら気持ちいいだろうなって。
「愛由……!」
思ったままに首の後ろに手を回すと、弾んだ声が俺を呼んで、望み通り柔らかな唇を重ねてくれた。
「ふぁ……、んん……っ」
何これ、おかしいよ……。
こんな所で気持ちよくなったら間違いなく変態だ。なのに、なんでこんなに………。
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