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二者択一

夏休みに出されたレポートの宿題はとっくに終わって、実家にも何日か帰った。みさちゃんとも週1は会ってデートもしてる。それでも、何をやっていても、毎日満たされない。予定があっても、どこか物足りない。それがなぜかってことは、とっくに分かっている。俺にとって大事な人が、傍にいてくれないから。 あゆ君………。 考えるのは、あゆ君の事ばかり。 一人の時もそうだし、課題をしていた時も、実家でゲームをしている時も、みさちゃんとデートしてる時でさえ。 あゆ君、今頃何してるかな……。土佐と一緒にご飯食べてたりするのかな。コンビニ弁当かな……?いや、もしかしたら土佐が奢りで居酒屋とかに連れていってるかもしれない。それか、ふたりで仲良く自炊してたりするのかも………。 「……くん、由信くん!」 気がついたら、目の前に座るみさちゃんの目が少しつり上がっている。 「ご、ごめんみさちゃん、何?」 「やっぱり聞いてなかったんだ」 「もう一回、話して貰えないかな……?」 「別に、仕事の愚痴だしもういいよ」 「ごめん……」 最近こんなんばっかりだ。大事なみさちゃんとのデート中だっていうのに、気付けばあゆ君の事ばっかり考えてて上の空になっちゃう。そして、みさちゃんを怒らせて、気まずい雰囲気になって……。 「ねえ、いつも何考えてるの?」 「何って、特に……」 「ウソ。ねえ、言って。他に好きな子でもできた?」 「そ、そそ、そんな事はないよ!絶対にない!」 「じゃあどうしてそんな風なの?」 女の人の勘は鋭いと聞く。お母さんにも、いつも隠し事はバレてた。これ以上何でもないでは通せないし、浮気を疑われるくらいなら、正直に話した方がいいのかもって思った。 「考えてるのは、あゆ君の事……。あゆ君どうしてるかなって思ったら、心配で……」 正直に言ったら、みさちゃんの目尻が更につり上がった。 「愛由君は犯罪者だって言ったでしょ?由信君にはそんな人と付き合って欲しくないの!」 「で、でもね、あゆ君、やってないって言ってたんだ」 そう。確かに、あゆ君はやってないって言った。でもあの時の俺はみさちゃんに別れるとか言われて、しかもあゆ君が人を刺したと聞かされて、頭がまともに廻っていなかった。やってないって言ってたのに、その事に全然反応してやれなかった……。 「愛由君の言うことと私の言うこと、どっちを信じるの?」 「……俺は、どっちも正しいと思ってる」 あゆ君はやってないけど保護観察になったって言ってた。世間的には、やったことになってるって……。でも、やってないってあゆ君の言葉を、俺は信じる。どうしてあの時すぐにそう言わなかったんだろう。出ていくって言うあゆ君に、何も言ってやれなかったんだろう……。 「ねえ由信君、聞かせて。私と愛由君のどっちをとるのか」 みさちゃんは、前に別れるって言ったときと同じだけ冷たい声で言った。きっと本気なんだなって思わせる声で。 「やっぱりあゆ君と付き合うのはダメ……なの?」 「だって怖いもの。そんな人が傍にいるなら、私は由信君の傍にいられない」 やっぱりそうなんだ。 みさちゃんを失うのは怖い。嫌だ。けど、失ってみて初めて気づいた。俺、あゆ君を失うのはもっと嫌。 あゆ君は、きっとみさちゃんに見つからない様にこそこそ会おうって言えば、何の文句もなく俺といてくれると思う。けど、そんな風に制限をつけられる事すら嫌だ。俺はあゆ君と会いたい時に会いたいし、いつだって一番に頼られたいし頼りたい。今、あゆ君の傍にいるのが俺じゃなくて土佐なのも、一番に頼られてるのが俺じゃなくて土佐なのも、耐えられない。あゆ君の一番は、俺だ。 「みさちゃん、ごめん。俺、やっぱりあゆ君を失うのは嫌なんだ。またあゆ君を家に泊めてあげたいし、あゆ君と一緒にいたい」 「……私よりも、愛由君を取るの……?」 「そういうつもりじゃないけど………」 でも、みさちゃんと付き合う事であゆ君と付き合えないなら、俺はみさちゃんを切るしかない………。 「悲しいな……。私、愛由君に……ただの男の子に負けるくらい、魅力ない……?」 「そんな事ないよ!みさちゃんは凄く綺麗だし、可愛いし、俺、みさちゃんの事大好きだし……」 「でも、愛由君の方が可愛くて魅力的なんでしょ……。男なのに……」 「そ、そんな、そういう意味じゃないよ!あゆ君の事は、親友として、好きで……」 「それじゃあ、由信君、お願いがあるの」 「え?」 「最後に私の事、抱いてほしいの」 「ええ……っ」 俺は、ぎょっとして辺りをキョロキョロ見回した。けど、ここは個室だからだれもいるはずはない。けど、声とか漏れてたりしないのかな……。 「いや?」 「い、いや、とかじゃなくて、でも、みさちゃんそういうのは結婚してからじゃないとやだって……」 「気が変わったの。由信君と結婚できないなら、せめて私の初めてを貰って欲しいの……」 「け、けけけ、結婚………!」 突っ込みたい事が沢山ありすぎて言葉にならない。結婚もそうだけど、初めてがどうとか………。 「由信君、顔真っ赤だよ。ねえ、由信君の家、行ってもいい?」 上目使いでそう言われて、俺は顔から火を吹きそうになりながら頷いた。 こんなの、断れる男がいるなら教えて欲しい。 そのまま店を出て家に来たみさちゃんは、妖艶に微笑んで俺を誘った。俺はもう夢中でみさちゃんに抱きついて、夢中で服を剥いで、みさちゃんに導かれるがまま、最後まで繋がった。 その最中のみさちゃんの声がいやらしくて可愛くて気持ちよくて、俺は最初から最後までずっとみさちゃんに夢中だった。 「由信君、とっても素敵だった……。私、由信君の事、もっともっと好きになっちゃったな………」 「みさちゃん、俺もだよ……みさちゃん、大好き………」 「やだ、由信君ってば、また………」 したばっかりなのに、みさちゃんとイチャイチャしてたら、またしたくなって、俺はみさちゃんを抱き締めた。 「由信君、これからも抱いてくれる……?今日で終わりだなんて言わないでね……」 「………みさちゃん、俺、馬鹿だった。みさちゃんと別れるなんて、絶対に嫌だ」 「由信君、ありがとう。愛由君より私を選んでくれて……」 あゆ君を思うと、胸がチクリと痛んだ。 でも、あゆ君はどんなに綺麗でも、男だからこんな風に俺の身も心も満たしてはくれない。あゆ君の事、どんなに好きでも、抱き合う事はできないんだから………。

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