あり得ないくらい重たいネックレスをつける夢を見ていた。 アクセサリーなんて持ってないし、自分ではつけたこともないのに、変な夢……。 「……ふぁ………な、に……」 くすぐったさを感じてうっすら瞼を開くと、横を向いて寝ていた背中の方から胸元に手が伸びてきていた。 「おはよう」 「ん……あ、さ………」 俺は胸元のくすぐったい所を弄る手を払い除けて身体を丸めた。まだ微睡んでいて、完全に無意識だった。 「悪い子」 そのつぶやきが耳に入ってきて、まずいと思って一気に覚醒した時はもう遅かった。 ウィィィン……という、スマホが震える音に少し似てるけど確実に違う嫌な音が聞こえて、背筋がゾクリとした。 構える間もなく布団を一気に剥がされる。 情けない事に裸だったから、いきなりやってきた寒さに驚いて縮こまった身体を、無理矢理仰向けにされる。そしてさっき指でやんわり刺激されていた乳首に、昨日散々苛められたピンク色のローターを当てがわれた。 「や……だぁ……っ」 昨日は本当に一日中ヤられていた。夜も、日を跨いでも尚飽き足らず抱かれて、漸くついさっき眠った所だったのに……。 気分じゃないのに、起き抜けで心の準備だってまだできてないのに敏感な所を弄られるのは不快でしかなくて、朝っぱらから泣きたくなる。 「愛由の乳首、もうしこってきたよ」 「は……ぁ……、んん……」 慣らされた身体は徐々に快感を覚え始めてきたけど、気持ちまではまだついていかない。 けれど、宗ちゃんは俺を待ってはくれない。 片方の乳首に、宗ちゃんがしゃぶりついた。もう片方は相変わらずローターを当てられていて、快感の波がひっきりなしに襲ってくる。そしてその波は、まだ重だるい下腹部にも確かに波及していく。 「あ、……ンン、は、あぁっ……」 「いい声が出てるじゃないか……」 意地悪な顔でにやけた宗ちゃんの手が、下腹部に伸びた。すっかり硬くなったペニスをやんわり握りこまれる。 「朝からイヤらしい子………」 誰のせいで………。 本当は悪態をつきたいくらいだけど、そんな恐ろしい事実際にはできる筈もなく、俺はいつもの癖みたいに快楽に身を委ねようと目を瞑る。 全部忘れる。俺が自分の意思でここにいるんじゃないことも、宗ちゃんと恋人でいるのも、セックスするのも嫌だってことも………。 目を瞑ったのがキスをねだったと思われたのか、宗ちゃんの唇が乳首から離れて口に吸い付いてきた。 気持ちのない相手とキスをするのは辛いから、俺はこのキスの相手に恐怖しか抱いていない事を忘れる様殊更に努めようとする。 長いキスが終わって、宗ちゃんの唇は俺の顎を伝って下りていく。首筋には熱い吐息だけを残して、唇は鎖骨に………。 そこで初めてリアルな違和感を覚えて、右手で首に触れた。硬くて、冷たい物が………。 ………え、なに………これ………。 首が重たいのは、夢だった筈。起きてからも何となくそこに違和感があったのは、夢の余韻だと思っていたし、目覚めてすぐに身体を翻弄されていて、正直それどころじゃなかった。 「宗ちゃん、これ………」 「うん、首輪だよ」 宗ちゃんはあまりにあっけなく答えた。 く、び、わ……？ 「なん……で、こんな………」 その存在に気付いた途端に息苦しくなるのが不思議だけど、この息苦しさは夢の余韻でも気のせいでもなんでもなくて酷く不快だ。 「決まってるだろ。愛由に逃げられない為だよ」 「そ、……な………。俺、逃げないって言った……のに」 「うん。でもさ、そう簡単に信用できないよ。俺、凄く傷付いたんだから。もう二度とあんな思いはしたくないし、次逃げられたら愛由の事殺しちゃいそうだし……」 また、背筋が寒くなる。 「だからね、愛由。俺がまた愛由の気持ちを信じられる様になるまでは、これつけておくんだよ」 愛由は俺の物って事、ちゃんと自覚して。 そう囁かれて、また愛撫が再開した。鎖骨を甘噛みされて、首輪の下をちうっと吸われる。 「愛してるよ……」 「…………」 「愛由」 「……宗ちゃん、俺も……」 急かされて言った言葉が、首輪と共に俺の戒めとなる。まるで、真綿で首を絞められるみたいに、ゆっくり、じっくり、でも確実に。