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愛し方 2
少ししてから宗ちゃんが力を抜いたから、それに合わせて俺も背中に回した腕を解く。宗ちゃんの視線を感じて見上げると、熱っぽい視線でじっと見つめられていた。察して目を閉じると、唇が下りてきた。すぐに終わってくれるものと思ったのに、その口付けは徐々に本格的なものに変わっていって、両手は身体をねっとりと這う。
「宗……ちゃん、トイレ………」
苦しくて宗ちゃんの服をぎゅっと握ると、宗ちゃんはようやく頭を上げた。
「ああそっか。おしっこ出しておかないと気持ちよくなれないもんね」
宗ちゃんはまた皮紐を持ち出してきて、俺の首輪に嵌める。ようやくトイレに行けるんだって思ったら尿意がさっきに増して差し迫ってきて、宗ちゃんがゆっくりと鎖の先に鍵を差し込むその時間がもどかしくて堪らなかった。漸く柱から解放された俺は、足早にトイレに向かった。革紐がピンと張るのも気にせず。
「愛由待ってよ。はは、散歩が待ちきれない犬みたい」
酷く馬鹿にされようと、この年でお漏らししてしまうよりはマシで、トイレに辿り着いてようやく膀胱の中身を空にできた時は知らずに入っていた全身の力が抜けて脱力した。ほっとして暫く便座に座ったままでいたいくらいだったけど、宗ちゃんがそれを許してくれなかった。
「早く行くよ」
クイクイと首輪を引っ張られて、寝室に連れていかれる。
「ねえまたさっきのして?」
俺は言われた通り、両手を広げて宗ちゃんに抱きつく。
これだけで終わりならいいけど、そんな訳はなくてさっきと同じ様に少し腕の力が緩んだら見つめられて、それから唇が落ちてきた。
舌を絡められて、耳障りな程の水音がし出したら、ついさっきまではトイレに行きたいってそればっかり考えていた俺の頭の中も、下の方も、別の事を期待し始めてしまう。本心では、こんな事嫌なのに、でも嫌って思ってたら苦しいから………。
「もうこんなにしちゃって。愛由は本当に可愛いね」
「ん……早く、続き………」
好色な振りをしたら、キスだけで昂った下はまた握られ刺激を与えられる。その内、後ろも前も乳首も弄られて、フリなのか本心なのかわからなくなるくらい気持ちよく乱されて、宗ちゃんが中に入ってくる。
どうせ逃げられないのだから、こういう扱いを本心で喜べばいいのだ。身体だけじゃなく、心まで………。
「ん……はあぁあ……っ、……!」
足の先から脳のてっぺんまで一気に突き上げる様な甘い痺れに身を任せる。直後にふわふわと浮かび上がってしまいそうな程の解放感を覚えて、頭がぼんやりとする。
「っ……!」
宗ちゃんが、夢と現実の狭間にいた俺をまた激しく揺さぶり始めたから、俺は無理矢理現実に連れ戻される。
自分がイった直後だからか、ついさっき溺れたいと思っていた心が妙に冷静だ。まるで、自分で思った事を自分で抑えつけ、否定するみたいに。
パンパンと肌がぶつかり合う音がするくらい激しかった動きが止まる。
目を開いて見た宗ちゃんは、眉根を寄せて苦しそうにしていた。いや違う。これは、絶頂して、快楽に悶えている顔だ。
その証拠に、中の宗ちゃんがビクビクして、熱い物が身体の奥に放たれた。
イクのは天にも昇る程気持ちいいのに、痛みを堪えている時と同じ顔になるのはどうしてなんだろう………。
痛みと快楽が紙一重なら、やっぱり痛いと感じるよりも気持ちいいと感じた方がよくて、暴力を振るわれない為には大人しく言うことを聞いていないといけなくて、拒絶できないセックスに痛みや苦しみを感じない為には、やっぱり心から溺れるしかないのだ。
「愛由、どうしたの?」
「………あ」
気がついたら天国を見ていた宗ちゃんはもう我に帰っていて、心の中で自分と対話してぼんやりしていた俺の顔を怪訝そうに覗き込んでいた。
「何考えてた?」
「な、にも………」
「嘘。土佐の事とか考えてたんじゃないだろうな」
「え………土佐………?」
宗ちゃんから言われた事は寝耳に水で、俺は思わずぽかんとして素の声が出てしまう。それが逆によかったのか、宗ちゃんは表情を和らげた。
「何でもないよ。……お腹減った?」
「………うん」
「そうだよね。朝から何も食べてないもんね。今作ってきてあげるから、休んでて」
優しくそう言われて頭をポンポン撫でられる。ほっとした次の瞬間、目の端に革紐が見えたから身体が強張った。
宗ちゃんは革紐の持ち手の輪っか部分に、半透明のバンドを通した。前に、思い出すのも嫌な状況で、宗ちゃんの足と俺の足を縛り付けた物と同じものだ。それをベッドの柵にも通して、一緒に締め上げる。革紐は、完全にベッド柵に固定された。
「今日は愛由の好きなおろしソースのハンバーグだよ」
宗ちゃんは、また優しい顔で俺にそう言うと部屋を出て行った。言う通り、階下に夕食を作りに行ったのだろう。
俺は、セックスが終わった事よりも、宗ちゃんに咎められなかった事よりも、また繋がれたショックの方が大きかった。もうすぐお腹が満たされるって期待にも勝るほどに。
だって、いつまでこうなの。
俺はさっき宗ちゃんが気に入る様に出来る限り好色に振る舞ったし、『愛してる気持ち』だって頑張ってちゃんと表した。それなのに、これじゃ足りないって言うの………?
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