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『愛してる』1
結局次の日も、その次の日も、ずっと俺は首輪に繋がれた。宗ちゃんが仕事でいない時はリビングの柱に。帰ってきてからは、革紐を宗ちゃんに握られて。
宗ちゃんにどれだけ愛してると言っても、頑張って態度で示しても、「まだ足りない」と言われる。これ以上なんてどうしたらいいのか俺には分からない。宗ちゃんに言われる事は何だってやってるし、セックスだって日に何度求められようとちゃんと応じてる。これ以上何をすればいいのか本当に分からなくて、毎日途方に暮れている。
もしかしたら、まだしっかり愛してる事を思い込めてなくて、フリなことを読まれているからダメなのかもしれない。このままじゃ夏休みが終わっても大学に行けない。首輪を外して貰うためには宗ちゃんを愛するしかなくて、俺は毎日毎日自分に言って聞かせるのだ。「俺は宗ちゃんの恋人。俺は宗ちゃんが好き」って。
*
小さくだけど、微かに玄関の扉の開く音がしたから、俺は立ち上がる。トイレに行きたいけど、初日程の強い焦燥はない。朝食の時は水分を控えているし、2日目から床に用意される様になった昼食の時もそうだ。それに、もうこうなって1週間以上だから、夜までトイレに行けない事を身体が覚えたらしい。夜眠っている時は何時間もトイレに行かなくても大丈夫なのと、多分同じ様なものだ。
「おかえり、宗ちゃん」
ドアが開くと同時に。宗ちゃんからただいまって言われるよりも先に言って、鎖がピンと張るまでドアに近づいて宗ちゃんを出迎える。
「ただいま、可愛い愛由」
宗ちゃんは見上げる俺にキスをして、それからじっとその場に立っている。
俺は、少しの間よく分からなかったけど、宗ちゃんの絡み付く様な視線に求められていることを理解して宗ちゃんの前で膝をついた。そして、宗ちゃんのズボンに手を伸ばす。
「ちょっと待って」
ベルトに手をかけようとしていたらそう言われて、俺はその体勢のまま固まった。
間違ったんだ。宗ちゃんの求めてる事はこれじゃなかった………。
どうしようどうしようとグルグル考えていたら、宗ちゃんが自分でベルトとボタンを外した。
「今日は手を使わないで口だけで全部やってみて」
口だけ……?
「俺の事好きなら出来るでしょ?ほら早く」
宗ちゃんから急かされて、俺は少し膨らんでるそこに顔を近づけた。全部って事は、脱がせるのも全部……って事だから………。
ズボンのチャックを舌で起き上がらせてしっかり咬んで下に下ろす。そして今度はズボンのボタンがついてる所辺りを歯で挟んで頭を動かして膝の辺りまで下げる。
「いいね。上手上手。手は後ろだよ」
支えとして宗ちゃんの足についてた両手を、言われた通り背中で組む。体勢が不安定になるけど、それが宗ちゃんの望むことなら仕方ない。
今度は下着のウエスト部分を口で掴もうとするけど、ゴムでぴったり身体に沿っているから、宗ちゃんのお腹に歯を立てないで掴むのがなかなか難しい。
「くすぐったいよ愛由」
「ごめんなさい……」
宗ちゃんはクスクス笑っているけど、俺は必死だ。上手くやれなくて機嫌を損ねられたら困るから。
ようやく掴めたそれを離さないようにしっかり噛みついて、慎重に下ろしていく。でも、すぐに何かに引っ掛かって上手く下ろせなくなる。目線を精一杯下げると、引っ掛かってるのは宗ちゃんの大きくなったぺニスで、もう完全に宙を向いている。
「下ろしにくい?押さえててあげようか?」
俺は間抜けにパンツをくわえたまま頷いた。
宗ちゃんがそれをお腹にぴったりくっつける様に押さえてくれたから、俺はその隙に下着も膝まで下ろす。
ここまででも結構疲れたし、やりきった感があったけど、宗ちゃんへの奉仕は今漸くスタートラインだ。
完全に勃ち上がっている宗ちゃんのぺニスの裏筋を下から丹念に舐め上げる。鎖が突っ張っていて動きづらいけど、宗ちゃんがこの体勢で、この位置でそれを求めているんだから、俺に嫌がる権利も断る権利も文句を言う権利もない。
帰ってきてすぐにこうして奉仕させられる事はこれまでにもあったけど、手を使うなと言われたのは初めてで、竿を固定できないせいで舌を這わせるとぺニスが上方に逃げてしまって上手く出来ていない気がする。それでも宗ちゃんのそこは血管が浮き出てまた大きくなった。
今度は亀頭の先を舐めると、少ししょっぱい味がした。宗ちゃんの先端から、透明の滴が溢れていたのだ。それをじっくり味わうのは抵抗があったから、先っぽを舐めるのは早々に切り上げて、竿までパクリと口の中に入れた。そのまま口をすぼめて水音を立てながら頭を動かす。
「いいよ……相変わらず上手い………」
宗ちゃんは吐息混じりに言って、俺の髪に指を絡ませながら優しく頭を撫でた。
いつもは根元は手で扱きながら奉仕していたけど、今日はそれができないから、喉奥いっぱいに宗ちゃんをくわえこむ。そうして舌を蠢かせながら吸い上げる様に頭を上下させると、宗ちゃんはため息をついた。口の中の宗ちゃんが脈打っては質量がどんどん大きくなって、元々いっぱいだった口の中がもっと宗ちゃんでいっぱいになる。
「愛由、いきそ………」
根元も、玉袋も今日は触れてないのに、宗ちゃんはいつもよりも早くそれを訴えてきた。俺はイキやすい様に、一定のリズムで頭を上下させる。
程なくして、口の中に生暖かい粘液が発射される。2度、3度と宗ちゃんのぺニスがピクピク震えて、その度に口の中が熱くなる。
………漸く大人しくなったぺニスから口を離して、息を止めて一息に口の中の熱いものを飲み込む。これも、証拠になるから。
「宗ちゃん。愛してるから、全部飲んだよ」
当たり前の様に言って口を開けて見せると、宗ちゃんが嬉しそうに笑って、まだ膝立ちの俺の首に手を回して抱き締めた。
今日はどうだろう。結構上手く『愛してる』を表せたんじゃないかな。
こうして宗ちゃんに優しくされる度に期待してるけど、いつまで経っても宗ちゃんは俺が待っている言葉はくれないままだ。
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