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オバケの教室 1

「愛由、ちょっと」 ゼミの後、いつも通りにともかく目立たない様に、素早く教室を後にしようとしていたのに、全然隠れる事はできていなかった様だ。ドアの所で宗ちゃんに声を掛けられて手招きされて、逃げ出したいのに身体はからくり人形みたいに勝手に動いてその眼前まで移動してしまう。 「昨日はマッサージありがとう。お陰でぐっすり眠れたよ」 他の生徒もまだ沢山残っているのに、宗ちゃんは何も隠す事なく普通の声量で言った。俺は少し慌てて、周囲をキョロキョロ振り返る。宗ちゃんの完璧な笑顔に、近くにいた女子生徒が見惚れている。岩崎が、興味深そうにこっちを見ている。ちょっと離れた所にいる土佐が、険しい視線を向けている………。 「愛由、こっち見て」 宗ちゃんがパチンと指を鳴らしたその瞬間、はっとした。 宗ちゃんが俺に話しかけてるのに、何余所見なんかしてるんだ。今は人目があるから指を鳴らしただけだったけど、いつもなら間違いなく殴られていた。 「ごめんなさい……」 「うん。で、昨日寝れたのはいいんだけど……ちょっと耳貸して?」 俺は、言われた通りに宗ちゃんの口元に耳を近づける。周囲にどう思われるか、なんて事、もう気にしてる余裕はなかった。もう俺には宗ちゃんしか見えなかった。 「ムラムラしてる」 「…………え……」 「昨日エッチしなかったから」 宗ちゃんが何を言いたいのか分かった途端、頬がカーッと熱くなった。本当は、心の中では血の気が引く思いなのに、心と身体の反応があまりにもチグハグだ。 そんな俺の反応を見て、宗ちゃんが満足そうにクスリと笑った。 「可愛い愛由。望み通り今すぐ抱いてあげるから、ついておいで」 宗ちゃんの口が、俺の耳から離れた。そして、言葉の通り身体を翻して……。 「愛由」 呆然としている内に、宗ちゃんはもう教室を出るところまで進んでいた。咎めるように名前を呼ばれて、慌てて後を追う。ついて行ったら俺、ヤられちゃうのに。分かってるのに、どうしたって拒絶できない逃げられない。 てっきり外に出るのかと思ってた。 車で家に戻るのか、それか、車の中でされるのか、どっちかだって。 「さっき教えて貰ったんだ、人気のない教室」 玄関をスルーして旧校舎の方に向かう宗ちゃんの後ろを歩きながら、嫌な予感は頭を掠めていた。それでもやっぱり宗ちゃんの後を追うことしかできない俺の頭は、もう結構手遅れな程にイカレテしまっている。 「おいで」 宗ちゃんが入ったのは、よく土佐と弁当を食べるあの教室。岩崎がオバケが出るとか何とか言っていた、あの―――。 「早く!」 語気の強さに尻を叩かれ中に入った途端、抱き寄せられた。いつの間にやら、宗ちゃんの息が荒くて熱い。 「ん……ぅん……」 些か乱暴に身体をまさぐられながら、濃厚なキスを仕掛けられる。苦しい、怖いし嫌なのに、やっぱり身体が熱い……。 「変態」 俺の身体は宗ちゃんが喜ぶ反応しか返さない。それでどんなに俺が苦しもうと、お構い無しに。 「こんなに硬くしちゃって。ねえわかってる?ここ大学だよ?」 言いながら、宗ちゃんは器用に俺の下半身をさらけ出していく。 「こんな姿誰かに見られたらどうする?」 「ふ、ぁ……っ」 宗ちゃんが俺の下を口に含んでピストンし出したから、震える手で口を押さえて、必死に声を圧し殺した。 宗ちゃんは俺の顔を見上げながら音を立てて容赦なく責めてくる。 ――――や……ばい…………。腰が抜けそう………。足が、ガクガクして………。も……………だ、め…………! …………………。 宗ちゃんは口をすぼめたまま俺から離れると、自分の手の中に口の中身をべーっと出した。 「1日しか空いてないのに、いっぱい出たね」 俺は恥ずかしくて恥ずかしくて、俯くしかない。 「ごめ……なさい……」 「いいよ。これが欲しかったんだから」 俯いていたその視界に、宗ちゃんのぬるぬるとした手が映った。その手は、スルリと俺の足の間に入って……。 「あ……っ」 「ローション代わりだよ」 俺はまた声が漏れない様に口を押さえた。 宗ちゃんの指が、無遠慮にズボズボ出し入れされているから。痛みと甘い痺れに、押さえていても、声が、息が、上がる。 「今日は本当に、一日中ずーっと愛由の事を考えてたよ」 宗ちゃんが、砂糖みたいに甘い台詞を吐く。けど、甘いのは言葉だけ。宗ちゃんは俺の中を乱暴に解した後、俺を教室の奥まで引っ張って行って、適当に並べた机の上に仰向けになるよう命令した。 「足広げて」 宗ちゃんは、もうズボンを下ろしている。 言われた通りに、足を広げて受け入れる体勢を作らないといけない。なのに、足首に下着とズボンがまとわりついて、両足を擦り合わせてもなかなか脱げない。 「早く」 1回目の警告。それでも俺がもたついてたら、宗ちゃんに乱暴に足を持ち上げられた。そしてそのまま上靴とズボンを脱がされ、靴も下着もみんないっしょくたに床に放り投げられた。 「手間を取らせるな」 「ごめんなさ、……っ!」 一気に奥まで入ってきた。俺は思わず身体を仰け反らせる。大きい声が出なかったのは奇跡だった。ローションもなしにあんまり解れてない奥を容赦なく突かれたのだから、苦しくない筈がない。 「ああ、やっぱり愛由の中が一番いいよ……」 宗ちゃんの顔が降りてくる。手をどかされて、長いキスを受ける。それが終わると、宗ちゃんの唇は首筋に下りた。 ―――また、吸われてる。また、沢山痕が残る。 昨日の俺は綺麗だったのに。またすぐにこんな風に汚される。 こんな所で。大学で。土佐とよく過ごす場所で、こんな事―――。 「………何だこの手は」 言われて気づいて、血の気が引いた。俺は腕を突っ張って宗ちゃんの身体を押し返す様に力を込めていたのだ。 「ごめ、」 パァンと、左の頬から破裂音。同時に目の前でチカチカ火花が散った。頭が揺れて、寝っころがってるのにクラクラ目眩がする程に―――。 宗ちゃんは、また何事もなかった様に俺の首筋に吸い付いていた。もう俺は、されるがまま。無意識の領域すら支配されて、人形の様に、ただ力を抜いて、身を委ねて……。 「……ふ、ぅ……ぁ……」 口をどんなに塞いで我慢しても、鼻に抜ける音までは防げない。中を突かれる度に、指の隙間から微かな声が漏れてしまう。 外に聞こえてしまうのではないか。誰かに聞かれたらどうしよう。不安で心配で止めたいのに、どうしても止まらない。 「可愛いよ愛由。1回じゃ、とても満足できそうにないな……」 息の上がった宗ちゃんが、余裕のなさそうな声色で言う。多分、終わりが近い。どうかこの1回で終わって欲しい。家に帰ったら、どんなおかしな衣装でもなんでも着るから。おもちゃとかだって使っていいから。だから、ここでは、これだけで――――。 「………ふぅ。次はバックにしよう」 祈りも虚しく、宗ちゃんは宣言通り1回出しただけでは満足してくれなかった。当然の様に続けようとしていて、俺の身体を机から下ろす。 「……でも、誰か……来ちゃうかも、」 だから、もうやめてお願い……。 「こんなの……見られたら、」 「その方が興奮するだろ?」 愛由は変態だから。 宗ちゃんはそう付け加えると、楽しそうにニヤリと笑って、俺の身体を後ろ向きにさせた。机に手を付かされ、腰を引き上げられる――――。

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