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凌辱 1
車の中でも、俺は護送中の犯罪者みたいに、刑事二人に挟まれた。運転していたのは知らない男で、宗ちゃんの父親は助手席に座っていた。
車が曲がりくねった山道に入り、舗装されてない所に入って行った時、もしやと嫌な予感はしていた。そして、1時間以上かけて到着したそこは、予想通りの場所だった。
「覚えているか?宗佑から初めて躾られた場所だ」
宗ちゃんの父親は俺を振り返ると、嗜虐的に笑って言った。
降りろと促され何とか車外には出たけど、その建物を前にしたら、ここで起きた出来事がフラッシュバックするみたいに甦って──。
「何をしている」
「さっさと歩かないか!」
隣で怒鳴り声がするけど───中では宗ちゃんが怖い顔して待ってるんじゃないか。また、酷く殴られて、あの部屋に監禁されるんじゃないか……いや、それどころか、もう何度も警告されていた通りに殺されるんじゃないかって思うと、足がすくんで動けない。
「もう大声を出させても構わん。引っ張って来い」
宗ちゃんの父親の冷たい命令を合図に、両側から乱暴に腕を引かれた。足が縺れて転びかけても、二人はお構いなしだった。
二人がかりで押し込められた家の中は、あの頃と何も変わっていなくて、もっともっと記憶がダイレクトにやって来る。
怖い。怖い。怖い───。
「お前を待ち侘びてる人がいるよ」
宗ちゃんの父親が、俺の予感している事を裏付ける様にそう言ったから、俺の足は震えて言うことを聞かなくなる。
警察の二人にズルズル引きずられながら向かっている先は、大きなベッドが置かれた広い寝室だ。宗ちゃんと、毎日沢山抱き合った、あの───。
「そうだ。ここを開ける前に……」
ドアノブに手をかけていた宗ちゃんの父親がふと動きを止めて振り返る。
「俺の事はちゃんと覚えていたようだが………この人の事は覚えているか?」
その問い掛けと同時に、宗ちゃんの父親の隣をずっと歩いていた運転手が、こっちを見た。その顔は───。
「愛由くん、また会えて嬉しいな」
ああどうしてまた、あの頃の──。
俺の身体を舐め回す時のだらしない顔は、忘れられる筈もない。そして──慌てて下着を上げる間の抜けた姿。それが、この人に関する一番新しい記憶。
「この人は会社の経営者だったんだけど、あの事件を切っ掛けに経営が立ち行かなくなってね。それで路頭に迷っていたところを、俺が情けをかけて今は運転手として雇ってるんだ。この人はね、お前にそんな目に遭わされたのに、それでもずっと口癖の様に言ってたんだよ。『愛由の身体にもう一度触れたい』って」
──そんな諸兄達が他にも沢山いてね。お前を心待ちにしているよ。
最高に不気味な微笑みでそう続けられて、ドアが開かれる──。
「ひっ……!」
逃げだす訳にはいかないのに、思わず後退りしてしまう。それぐらい、異様な光景だった。
「愛由くんだ」
「待ってたよ」
「相変わらず可愛いね」
「早く触らせて」
悪夢の様だ。
一番恐れていた宗ちゃんはいない。けど、捨ててしまいたいと何度も思った記憶のおじさん達が、数え切れない程沢山──。そのみんながみんな、俺の事を獲物を見定めるみたいなギラついた目で見ている。
「や……」
また後退りしようとした俺の背中は無情にも押し返されて──。
「さあ、あの頃みたいに沢山遊んで貰いなさい」
その声を合図に、半ば突き飛ばされる様にして俺の身体は部屋に押し入れられた。
「ハァ、ハァ、愛由くん……。またこうして愛由くんに触れる日がくるなんて……おじさん幸せだよ」
鼻息の粗い運転手のおじさんに後ろから抱きすくめられて、身体をベタベタ触られる。他のおじさん達の手も何本も伸びてきたから、誰に何をされているのか最早分からない。
──こんなの、もう嫌……。
気持ち悪くて、全身寒気がして、叫びだしたくなる程に──。
「勿論分かってると思うけど、いい子にしてないと……」
俺はピタリと動きを止めた。
宗ちゃんの父親は最後まで言わなかったけど、身を捩っておじさん達の手から逃れようとする俺に対して、何を言いたいのかはすぐに分かったから──。
「あの頃よりも聞き分けがいいねぇ。こんなにいい子なら、殴らなくても言うこと聞いてくれそうだ。おじさん嬉しいな」
愛由くんの痛がってる顔も可愛いけど、気持ちよくなってる顔はもっともっと可愛いからね。
運転手のおじさんが、耳の中に舌を捩じ込みながらそう言った。
もう服は半分以上脱がされ、下の服は全部下ろされていた。誰かが俺の前に屈んでペニスを口に含んでいる。両方の乳首もそれぞれ別のおじさんに舐められて、息つく暇もないくらい次々と違うおじさんから口付けを受ける。両手にはおじさんのペニスを握らされ、しごく様に命令されていたけど、やがて膝をつかされ次々と口の中にそれを突き立てられ始めた。
まるで昔をなぞる様に、嫌になるぐらい、そのままだった。少なくともここまでは───。
「愛由くんはお顔も相変わらず可愛いけど、アナルもあの頃のまま綺麗で……おじさん本当に感激だよ。さぁ、中もよーく見せて……?」
四つん這いにされてすぐだ。尻の割れ目を、皮膚の付け根が突っ張るくらい思い切り広げられて、ぼんやりしつつあった意識が痛みと警戒心によって引き戻されたのは。
「ああ、中まで綺麗なピンク色……。処女じゃないのが嘘みたい。18才だって事、忘れちゃうくらい可愛いんだから……」
「愛由くんが処女喪失するところ、ナマで見たかったねえ」
「けど、これから愛由くんと思う存分アナルできるんだから。僕は夢にまで見たよ、愛由くんと最後までするの」
「私だってそうさ。4年越しに想いが叶うなんて、感激だね」
おじさんたちが沸き立つ。
逃げちゃいけないのに逃げ出したくなる程の恐怖に、ガクガク震えが止まらない。けど、無慈悲に後ろには冷たいローションが垂らされて───。
「い、……っ」
「あ、あ……愛由くん……すごいっ……きもちい……っ」
最初に入れてきたのは、運転手のおじさんだった。相変わらず身体をベロベロ舐めるのが好きで、キスの最後には必ず涎を垂らして飲ませてくるというキツい性癖もそのままだった。痛くて、臭くて、気持ち悪くて、苦しくて───。
「愛由くん、泣かないの。お尻気持ちいいでしょ?ね?」
気づけば、俺は子供の頃みたいに泣きじゃくっていた。あの頃に受けた心の傷が疼いて、今受けている苦しみに拍車をかける。
「聞こえないなぁ。ねえ、気持ちいいって言ってよ」
「ひくっ、……き、もち……い……っ」
「上手に言えたね。ご褒美にちょっとお手伝いしてあげる」
「ひっ、あッ……」
誰かの手が、萎れたままの俺のペニスに伸びてきた。ヌルヌルの手でしつこくしごかれ、無理矢理形を作らされる。
「あ……や、ぁ……ん……」
「やらしい声が出てきたね。愛由くんの中もおじさんのにねっとり絡んできて物凄くいやらしいんだ……。おじさん早漏じゃないのに、すぐイっちゃいそうだよ……」
一度快楽の引き金を引かれたら、それを知覚するのは容易いことで──内部を突かれ続ける内に、拒絶している心を裏切って、身体は記憶の中から快感を呼び起こしてしまう。
「どうやら後ろでも感じてきたみたいだ」
「もう触らなくても前もビンビンじゃないか」
「愛由くんは本当に感度がいいね」
「見てみろ。顔がトロけてきた」
「すごくえっちだね」
沢山のおじさん達に至近距離で見られながら犯され、自分の醜態を聞かされるのは、心を抉られるほどに恥ずかしくて、何か言われる度に自尊心を何度も何度も地の底に叩きつけられる。
「あ……ぃや……やだぁっ!」
それなのに意志に反して身体は昂ぶり続けて、やがて限界を迎え──目の前が真っ白になった。
「おーいったいった」
「可愛いねぇ……」
「濃いのがでたよぉ」
「どれ。おじさん舐めちゃおうかな」
「あ……おじさんもイクっ……あっ……!」
おじさん、愛由くんに搾り取られちゃったよぉ。もう少し堪能してたかったのになぁ。
運転手のおじさんは名残惜しいと言ってベロベロと何度も気色の悪いキスをしてきた。
漸くペニスが抜かれると、中からとろっと精液が垂れるのを感じた───と思ったら、そこはすぐにまた別のおじさんのペニスで蓋をされてしまう。
───何度それが繰り返されただろう。
途中で、宗ちゃんの父親が「あと10本あるからな」と言った。おじさんたちはみんな笑ってた。「愛由くんのお尻壊れちゃうね」って、楽しそうに────。
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