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凌辱 4

────出して!出してください……!ここから出して…………。 心の中で、何度叫び、何度祈った事か。 手枷、足枷、首輪をつけられ、しまいに猿轡まで噛まされて監禁されたのは、暗い暗い地下室の中だった。 たくさんのおじさん達に犯され、その人たちが帰った後には宗ちゃんの父親から、何度も何度も───。 地獄の様だと思った。身体も心も、痛くて痛くて、だんだんそのどちらもが麻痺してきても、締め付けられる様な苦しみは消えなかった。 宗ちゃんの父親は、俺を犯した後、汚れた身体のままの俺をここに閉じ込めた。 宗ちゃんの家の地下室と同じ、真っ暗で、一筋の光も届かない、完全なる闇の中に。 あの人は言った。「ここから出すのは、お前を犯す時だけだ」って。 もう、本当に絶望しかない。暗闇に飲まれたくないのに、ここから出るのも怖い。また、沢山のおじさんたちに囲まれなぶられるのが怖い。もう、それならいっそ、ここで暗闇に飲まれた方がいい。死んだ、方が───。 * 「愛由くん」 扉が開いて聞こえてきた声は、あの人のものではなかった。 眩しすぎてシルエットしか見えない人影が近寄ってきて、俺の足枷と猿轡を外して腕を引っ張った。 辛うじて立ち上がることはできたけど、すぐにふらついて倒れかけたのを抱き留めたその人は、運転手のおじさんだった。 「大丈夫?ゆっくりでいいからね」 そう言って、おじさんは俺を支えながら一歩一歩一緒に階段を上った。ここに来て初めて優しさに触れたような気がしたけど───その手にはしっかりと俺に首輪から延びる革紐が握られている。 また寝室に連れていかれるものと思っていたけど、着いた先は脱衣所だった。シャワーを浴びようねと言われて、手錠を外され、形だけ羽織らされていたボタンも締めていないシャツを脱がされたら、もう俺は裸だ。 おじさんは、浴室に入る前にまた俺に後ろ手に手錠をつけた。「これじゃ、自分で洗えないでしょ?」おじさんはそう言って、自分も服を脱いだ。 「っ……」 「可愛いねぇ。愛由くんは本当に可愛い……」 初めは普通に俺の身体に泡を擦り付けていたおじさんの手つきは、だんだんいやらしいものに変わってきて───。 「や……っ」 「あれぇ?ここ、何でだろうね、ツンって尖ってきたよ」 おじさんは後ろから回した手でわざとらしく胸の中心だけを何度も何度も撫で擦ってきた。そして、生理的に立ち上がったその突起を、もう誤魔化すこともなく指でくにくにと摘まみ始めた。 「やめ、て……」 「こっち向いて」 おじさんは俺の身体をくるりと回した。そして向かい合わせになった途端、キスをしてきた。 「ん……んん……っ」 「愛由くん……愛由くん……好きだよ……」 顔を鷲掴みにされて、逃げられない。また胸も弄られて──。 「口、あーんして」 漸く唇が離れたと思ったら、おじさんがそう言った。 何をするつもりか、反射的にわかった。それを証拠に、おじさんは口をモゴモゴさせて、きっと口の中に溜めてる……唾液を。 嫌で、気持ち悪くて咄嗟に顔を背けた。 「言うこと聞かないと……」 おじさんは優しい喋り口調の割にかなり乱暴に俺の顔を掴んで上を向かせた。そして、 「お友達がどうなってもいいの?」 宗ちゃんの父親からも何度も言われたそれを聞かされたら、従うしかなかった──。 「う……」 「ああ……可愛い愛由くんが、おじさんの汚い涎を美味しそうに……」 おじさんは恍惚の表情で唾液を垂らし続けた。 臭くて気持ち悪くて、吐きそう……。だけど──。 「全部ごっくんできたね。おじさん嬉しいよ。前は何度言って聞かせても吐き出してたのに。愛由くん、本当にいい子になったねえ……」 ご褒美をあげるからね。と言って、おじさんは俺の身体をまたくるりと回転させた。尻を突き出す様に言われて、背中に硬いものを押し当てられる。 「や……だ、お願い、やめて……」 「いいじゃない。おじさんと気持ちよくなろうよ」 おじさんは、俺の腰を掴むと勢いよく自分の方に引き寄せた。体勢を崩した俺は、肩と頬を目の前の鏡について体重を支えるしかなくて、おじさんの望み通りの前屈みになってしまう。 「あ、……いっ……」 「愛由くんの中、まだヌルヌルして、るっ……」 おじさんは強引に俺を貫いた。おじさんが腰を動かす度に、中からじゅぶじゅぶと耳を塞ぎたくなるような嫌な音がする。 「この精液、おじさんのだよね。愛由くんちょっと朦朧としてたけど、覚えてる?昨日最後にしたの、おじさんだったんだよ」 おじさんは、こんなに大事にとっておいてくれて嬉しいなぁと一人興奮しているけど、俺を最後にしたのはこのおじさんじゃない。 「それにね、おじさんがいちばん沢山愛由くんを抱いたんだよ。今日も誰よりもいっぱい愛由くんの中に出してあげるからね……」 おじさんの腰使いが激しくなる。もう擦られ過ぎて痛いだけの筈なのに、敏感な部分を突かれると痛みに混じってじわりと快感が滲む。こんなの嫌なのに。こんな暴力で感じたくなんかないのに──。 「ふ……あ、あぁっ……」 「可愛いなぁ……。愛由くんのえっちな声、おじさん大好きだよ」 おじさんが、手錠の繋ぎ目を掴んで、さらに自分の方に俺を引き寄せた。俺の上半身は鏡から離され、手錠に吊られるみたいな形になる。 ───久々に与えられる、この痛み。宗ちゃんに使われたも様の、何のクッションもない固い金属の手錠で体重を支えるのは、想像を絶する程に痛い……。 下はおじさんに繋げられ、上は吊るされて、逃げ場がどこにもなかった。もうこれ以上入っていかないっていう奥の奥まで、おじさんにじっくりと犯されて──。 「あ……、だ、め……やぁああっ!」 「愛由くんいっちゃったね……。あぁなんて可愛いんだろう……。おじさんも、もう我慢できないよ……。愛由くん、好きだよ、愛由くんっ!」 おじさんの動きが止まる。力が抜けたのか、おじさんが漸く手錠から手を離したから、俺の身体はまた鏡に寄りかかる。 「愛由くん……おじさん、本当に愛由くんが好きだよ。天城さんには愛由くんはあくまでも息子さんの所有物だって念を押されてるけど……せめて毎日、おじさんがこうして一番に愛由くんを抱いてあげるからね。大好きだよ……」 「んっ……」 おじさんはもう出した筈なのにまだ繋がったまま俺の顔を後ろに向かせてキスをして、お約束の様に唾液を垂らしてきた。そうして、また腰を振り始める。 「愛由くんがあんまりエッチで可愛いから、おじさん全然治まらないよ……。この後また寝室でパーティーだけど、あと1回だけここでさせて。おじさん、愛由くんを独占したいんだよ……」 ──そんな気はしていた。地下室を出されたということは、また寄って集って───。 けど、間違いなくそうだと聞かされるのは、例え覚悟していても一瞬頭の中が真っ白になるレベルでダメージを食らう。 「大丈夫心配しないで。今日も昨日と同じくらいの人数集まってるけど、おじさんが誰よりも沢山抱いてあげるから。愛由くんも、おじさんに抱かれてる時が一番気持ち良いいでしょ?恥ずかしがらなくてもいいよ、分かってるから……」 おじさんは、俺を絶望の底に突き落とす事ばかり言いながら、俺を責め立てる。 「またイっちゃったね……。みんなにヤられちゃう前に、愛由くんの精液空っぽにしちゃおっか」 淫乱で厭らしい身体。 おじさんは俺の事をそう蔑んだ。 俺は耳を塞ぎたくなった。あまりにも、図星過ぎて。 おじさんにされるのはこんなに嫌なのに。このあとの事を思うと気が狂いそうな程に怖くて堪らないのに、この身体はそれを受け入れて、あまつさえ悦んですらいる。 身体は正直だよ。 どれだけ首を振っても、嫌だと言っても、この一言で俺は人格ごと好き者の変態に堕とされる。見えない所に、消えない傷を残しながら───。

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