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凌辱 6
「──愛由くん、おじさんと一緒にここから逃げ出さない?」
汚れた身体をシャワーで洗い流しながら何か言っていたおじさんが、「ねえ愛由くん?」と頻りに俺に返事を求めている。
「うん」
頭の回転が鈍すぎて、集中しないと言葉はただ音として流れていくだけだから、何を聞かれているのか皆目分からないけどそう答えた。した後に聞かれるのは大抵「気持ちよかった?」だとか、「おじさんのこと好き?」とかだった気がするから、取り敢えず肯定しておけばいいのだ。
「本当に……?おじさんだけの愛由くんになってくれるの?」
おじさんの声のトーンが上がった。身体を回転させられて、向かい合わせになってじっと見つめられる。
「おじさんの家にもね、ちょっと狭いけど愛由くんを閉じ込めておける部屋はあるんだよ。愛由くんも、ここで大勢に犯されるより、おじさんだけに囲われていたいよね?」
おじさんのテンションは相変わらず高い。
閉じ込める、って言った……?今日はこのまま地下室に戻されるのかな。……地下室も嫌だけど、寝室に行くよりはマシだから、もしそうなら嬉しいな。
「安心して。おじさんひとりでも、えっちな愛由くんをちゃんと満足させてあげるから。ねえ愛由くん。おじさんのものになるって言って?毎日おじさんと……おじさんだけと濃厚セックスしようよ。もう、他のやつらに抱かせるのは辛いんだ……」
なんだ、おじさんはするんだ。また、するんだ。今日は地下室で、おじさんとだけするのかな。分からないな。もう少しゆっくり話してくれないかな……。
「──ねえってば!!」
ずっと何やら言っていたおじさんは、また俺に何かを聞いていたんだろう。おじさんが痺れを切らした様に突然怒鳴ったから、思考が一時停止してしまう。
「一緒に来てくれるんだよね!?」
おじさんが俺の肩を掴む。その剣幕と必死の形相が怖くて、思わず後ずさって首を横に振った。
「どうして……?おじさん、優しいでしょ?おじさんとのエッチは気持ちいいでしょ?愛由くんいつもイッてくれるじゃない。おじさん、愛由くんの事大切にするよ?気持ちいい事だけいーっぱいしてあげる。無理矢理お酒飲ませたり、痛いことはしないよ?だから、一緒に来てよ」
おじさんの必死さは変わらないけど懇願する様な調子になったから、俺の恐怖心は少し和らいだ。
また鈍く動き始めた頭で考えたら、さっきからおじさんが言ってるのは、どうやら地下室でしようって話ではなさそうで、もっと危険な事みたいだった。このおじさんだって、俺を玩具にしている一人であって、情なんて少しもない。だから、預かり知らない所で自爆するなら勝手にすればいいけど───。
俺は、今度は(多分)ちゃんと分かった上で首を横に振った。
「どうしてだめなの?好きなんだ……本当に本当に好きなんだよ……。おじさんと逃げれば、もう他の男に抱かれなくて済むんだよ?」
また首を振ったら、おじさんは苦しいくらいに強く抱き締めてきた。
「もう決めた。愛由くんのこと浚っちゃう」
おじさんは漸く身体を離してくれたかと思ったら、俺の首輪を引いて、浴室から出るように促した。
「早く、これ着て」
おじさんが手早く自分のを着た後、俺の後ろ手の手錠を外して、自分のジャケットを羽織らせてきた。いつもなら裸のままか、恥ずかしいコスプレをさせられて寝室に向かうのに。
身動きが取れずにいると、おじさんから腕を通されて、また後ろ手に手錠をかけられた。おじさんがジャケットのボタンを締めるのを眺めながら「だめ」と言ってみたけど、おじさんは全然聞く耳を持ってくれない。
「おじさん、」
「しっ!……誰もいないみたいだ。さ、早くこっち」
おじさんはスパイとか探偵とかみたいに脱衣所のドアから外を覗いて、また俺の首輪を強く引いた。
向かっているのは、やっぱり明らかに寝室の方じゃない。
「おじさん、だめ、」
「大丈夫。みんなもう寝室に入ってる頃だから、見つかりっこないよ。愛由くんが来ないとも知らず、股間を膨らまして待ってるんだろうね。愛由くんはおじさんだけのだっていうのに……」
おじさんは革紐を強く引きながら、けど顔だけはニコニコして俺を振り返った。玄関へと続く廊下の曲がり角を、曲がる時だった。
「あ……」
角を曲がって前を向いたおじさんが、まるで不意討ちって声を出した。玄関に、沢山の人影を見たから。
「愛由が誰のだって?」
その沢山の人影の中央にいた宗ちゃんの父親が、おじさんに問い掛けた。おじさんは、驚きすぎて絶句している様だった。
「それは宗佑のものだ。本気にならない様、あれ程念を押しておいたのに……」
「…………」
──だから、だめだって言ったのに……。
「この家は全ての部屋にカメラがついてるんだ。勿論浴室にもね。お前が毎日浴室でそれを抱いていたのは知ってたよ。それには目を瞑ってやっていたのに、身の程知らずが……」
宗ちゃんの父親がおじさん達の群れの中から悠然と歩いてくる。そして、縮こまったおじさんを見下ろし、手を出した。
「寄越しなさい」
宗ちゃんの父親が求めているのは、首輪の革紐だ。
「…………」
俯き、小さくなりながらも、おじさんはそれを握ったまま離さない。
「寄越しなさい!」
宗ちゃんの父親に怒鳴られて、俺もおじさんと同じく肩が跳ねた。そうして漸くおじさんは革紐から手を離した。その短い紐が俺の胸の辺りでぶらぶらしてるのを、今度は宗ちゃんの父親が掴んだ。
「お待たせしてすまない諸君。いつもの様にたっぷり可愛がってやってくれたまえ」
わらわらと玄関の前に並んでたおじさん達が寄ってきて、俺の首輪の紐は、その中の誰かの手に渡った。
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