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嵐の前3

  風呂から上がった透は、リビングのソファに寝転び、ダラダラとテレビを見ながら彰広を待つ。 特に見たい番組もないので、ぼんやりと深夜映画を見ていた。 随分古い映画で、蝶を収集するのが好きな青年が女性を拉致し、監禁する話だった。 青年は特に暴力を振るうでもなく、女性を観察し、自分を愛して欲しいと訴える。 透は彰広に監禁されたことを思い出していた。 あんなこと……他の誰かであれば、絶対に許せなかっただろう。 随分ひどいことをされたはずなのに、行為とは裏腹に「透……透……」と、切ない響きで何度も名前を呼ばれた。 だからだろうか。 いとも簡単に許してしまったのは。 彰広は透ですら知らなかった欲望や想いを引き出した。 透はまだ、その想いを持て余している。 それでも、もう彰広と離れることなんて考えられないのだけれど。 画面では、監禁された女性が逃げ出そうとして男に捕まり、雨の中引きずられて再び地下室へ閉じ込められていた。 これ以上見続ける気になれず、透はテレビを消して目を閉じた。 そのまま、ウトウトと眠ってしまった。 奇妙な感覚に少しずつ意識が覚醒していく。 根入りに見た映画のせいか、嫌な夢を見ていた気がする。寝返りをうとうとして、透は違和感に気付き、一気に目が覚めた。 「……!?」 手足が動かないのだ。 目を開けても、真っ暗で何も見えない。 夢の延長かと思ったが、違う。 「な、なに?」 縛られて、目隠しをされているのだとようやく気付いた。   

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