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抱擁

  ようやく解放され、透はぐったりとベッドに横たわっていた。 指一本、動かすのも億劫だった。 彰広はベッドの端に座り、タバコを吸っている。 今日の彰広は、いつもよりも激しく透を抱いた。 それに……透と目を合わすのを、避けていた? 彰広の背中をぼんやりと眺めながら、透は思った。 なにか、あったのだろうか? 彰広の仕事、いわゆるヤクザ稼業については、彰広は透には見せないようにしている。 それを知っているから、透も聞かないし、聞くことができない。 彰広が、何をしてきたのかを。 この世界で若くして彰広はのし上がってきた。まだまだ野心もあるし、敵も多い。 「彰広」 透は腕を伸ばし、彰広の大きな背中に手のひらて触れた。彰広が肩越しに振り返る。 「こっち来い。誰かのせいで動けない」 タバコを消し、彰広は透に向き直る。 透は両手を広げて、彰広を抱き寄せ、抱きしめた。 「なんだよ……」 されるがまま、彰広は透の胸に頭をのせて呟いた。 「黙ってろ」 透は胸に抱くようにした彰広の頭を撫で、もう一方の手で肩を抱く。 「……透」 それきり無言になり、彰広は透の心音を聴くようにして、心地よさげに目を閉じた。   

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