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運命のひと1
黒田は身悶える透を見下ろしながら、昔の事をぼんやりと思い出していた。
幼い頃から、自分は要領の良い子供だったと思う。
自分の容姿が整っており、他人から好意を寄せられやすいことも分かっていた。
黒田はどこか、感情の冷めた子供だった。
思春期に入り、黒田は異性を恋愛対象として見れないことに気付いた。
背が高く整った容姿に、人当たりの良い微笑を浮かべている黒田は、恋愛対象が男でも相手に不自由はしなかった。
だが、ひとつ困ったことに気付く。
自分は普通の付き合いでは満足できないのだ。
相手を追い詰め、痛めつけることに興奮する。
泣かせて傷つけ、絶望が宿った瞳を見たいのだ。
誰でもいいわけじゃなく、好きな相手をこそ、拷問のようなセックスで味わいたい。
その人当たりの良さとは相反して、何事にも無関心で覚めた心の持ち主だった黒田は、生まれて初めて頭を悩ませた。
17歳になった黒田には、自分から口説いて恋人になった、一つ下の少年がいた。
黒田は彼を責め苛む妄執に憑りつかれていた。
あるとき、黒田は自分には嗜虐嗜好があり、恋人を責めたいのだと少年に告白した。
少年は戸惑いを見せたものの、自分は黒田が好きだ。黒田になら何をされても構わない、と恥ずかしそうに告げた。
黒田は喜びのあまりに、そのまま恋人を押し倒し、思うままに欲望をぶつけ責め苛んだ。
少年はボロボロに傷つき、嫌悪と拒絶の眼差しで黒田を見た。
気持ちが悪い。
吐き気がする。
頭がおかしいんじゃないのか。
二度と触れるな。
───異常者!!
恋人だった少年は黒田を徹底的に拒絶し、学校も転校してしまった。
17年間、何事にも無関心のまま、それでも要領良く生きてきた。その黒田が生まれて初めて、自分の方から心を動かされた相手だった。
……異常者。
ああ、自分はおかしいのだ。
黒田の心は冷たく凍り、今まで以上に深く人と関わらなくなった。
顔には微笑を浮かべ、人当たりの良い仮面を被って。
それでも、歪んだ欲望を抑えることはできず……大学生になった頃には、そのテの店や出会い系を利用して、SMプレイに興じた。
欲望を吐き出すだけの行為は空しいだけだったし、なにひとつ満たされはしなかった。
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