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病弱くん、はじめてのお留守番/その2

      「かーずーくんっ。」  耳元で、最近すっかり聞き慣れてしまった声がする。 「かずくん、ただいま。」  うっすら目を開けると、柔らかく微笑む綺麗な男性と目が合った。 「あ、えっ……。」  僕は驚いて身体を起こすと、彼はソファの背に腕をついて面白そうに僕を見下ろしていた。 「ふふっ、かずくん寝ちゃってたね。」  彼の大きな手が僕に伸びてきて、頬を包む。そして愛おしそうに僕の頬を撫でた。 「かずくん、お皿洗ってくれたんだね。お風呂場も、帰ってきたら洗わなきゃなぁって思ってたんだけど、すごくピカピカになってて、俺、びっくりしちゃったよ!」  その言葉に、僕は昼間の出来事を思い出した。そうだ、僕は疲れて、いつの間にか寝てしまったんだ……。 「すっげぇ嬉しい! かずくん、ありがと♥」  こーくんは僕の顔を引き寄せると、頬にキスをした。そしてそのまま、ソファの向こうから僕を抱きしめる。 「あぁ〜〜〜会いたかったよかずくんっ。かずくんの顔とか匂いとか体温とか、全部可愛い! はぁ〜〜〜癒される〜〜〜♥」  そして僕の頬に頬擦りしたり、頭を撫でたり、ぎゅうっと強く抱きしめたり。僕はされるがままになっていた。 「あ、あの……。」 「うん? なぁに? あ、お腹空いちゃった?」 「そ、そうじゃなくて……あの…………。」  近すぎる彼から少し身体を逸らして距離を置くと、俯きながら小さな声で。 「お、……おかえりなさい。その、僕、ちゃんと待ってたから……。」  言ってから、リアクションの無い彼を恐る恐る見上げると、彼の顔は真っ赤になっていた。朝、待っていると言ってしまったので、帰ってきてからもちゃんと彼に言わないといけないと思ったのだ。 「か、かずくん……。」  すると、彼は真剣に、でも、少し切ない声で、僕の耳元に自分の唇を寄せた。 「今日さ、後で、かずくんにお願いしたいことがあるんだけど、良い?」 「お、お願い……?」  首筋に吐息が触れる距離に彼の綺麗な顔がある。そう思うと僕はドキドキして、顔も身体もカッと熱くなるのを感じた。 「うん。お願い。俺、今日お仕事頑張ってきたから、ご褒美欲しいなぁ……?」  彼が寄せる耳元に熱い息がかかって、身体がぶるりと震えた。 「わ、わかった…………お仕事、してきたんだもんね……。」 「えへへ、嬉しいなぁ。あ、じゃあかずくんへのご褒美ね! 俺のイチオシホットサンド〜♪」  彼は僕からパッと離れると、無邪気な笑みを浮かべてダイニングテーブルの上にある紙袋を手に取った。 「ちゃんとオーブントースターで温め直すから、ちょっと待っててね。俺もうお腹ペコペコだよ〜。」 「う、うん……。」  そう言って、彼はさっさとキッチンに向かってしまった。その背中に小さく言葉を返して、僕は唖然とした。彼の言う、お願いって何だろう。こんな何もできない、あまり生活能力のない僕でも叶えてあげられることだろうか……。   「これがバジルチキンのホットサンドと、隣のはベーコンエッグのホットサンド! こっちはマグロの竜田揚げが入った黒ゴマ生地のパニーニと、そっちはサーモンとアボガドのサンドイッチ! それからプロシュートと粗挽きソーセージ、モッツァレラチーズ、レタス、トマトのボカディージョでしょ〜。あ、あとこれが、サイドメニューのコールスローと、冷製クルトン入りコーンスープ、チキンナゲット&ポテトフライのノーマルとバーベキュー味! それからお好みでケチャップと甘いハニーマスタードもどーぞ!」  ダイニングテーブルの上に広げられた様々で、色とりどりのサンドイッチ。どれも美味しそうだけど、僕はその量に圧倒された。口をポカリと開けて目を点にしていると、 「あははっ、どれもかずくんに食べてほしくて、選びきれなかったんだ。結局たくさん買ってきちゃったよ〜♪」  彼が照れ臭そうに頬を掻きながら、それでもどこか嬉しそうだった。サンドイッチたちは彼が気を効かせてくれていて、僕が少しずつ色んな種類が食べられるように四等分に切り分けられていた。 「ど、どれも美味しそうだね……。」  そう言って、一番手前にあったサーモンとアボガドのサンドイッチを口に入れた。 「どお? どおっ??」  小さい子供のように何度も聞いてくる彼の様子に、僕は思わず吹き出した。 「ふふっ……うん、美味しいよ。」 「う、うぅ〜、かずくん……。」  彼を見ると、今度は両手を膝に置いたまま俯いていた。 「えっ……ど、どうしたの……?」 「ご、ごめん、何でもない……。」  そう言って顔を上げた彼の表情は、すこし困ったように、でも幸せそうな満面の笑みだった。  その日の夕食は何だか楽しくて、色んな味を楽しみながら、ボクはこーくんに聞かれて、こーくんがいなかった間のことを話した。浴室のライトのことを、彼は知っていたようで、僕がその秘密に気づいて話すと面白そうに笑っていた。逆に彼は午後の仕事のことを話してくれた。                僕は夕飯を食べ終わって順番に風呂を済ませると、彼に呼ばれて寝室へ行った。ちなみにサンドイッチたちは、ほとんど彼が食べてくれた。僕も一応全種類口にしたが、セレブの彼が言うだけあって今までで食べたサンドイッチの中でもダントツに美味しいものばかりだった。まぁふだんサンドイッチを食べるといったらコンビニでしか食べないのだが。  僕は風呂に入るのを楽しみにしていた。その様子が彼にも伝わっていたみたいで、僕が風呂に入りに行こうとすると、そういえば脱衣場に浴室用のリモコンがあるよ、と教えてくれて、その後に「何色にするの?」と面白そうに聞いてきた。僕は真面目に「青にして、プラネタリウムもやる……!」と答えて、早足で脱衣場に向かった。後ろから「あははっ、長風呂してのぼせないようにね〜!」と彼の声が聞こえた。浴槽に浸かると僕は教えてもらったリモコンを操作して、プラネタリウムを楽しんだ。この青が、暗い夜空のような青色で、プラネタリウムにはぴったりだったのだ。ボクはのぼせる前に、とまだ楽しんでいたい気持ちを抑えて、早めに風呂からあがった。リビングに戻ると、いつもの様にドライヤーを持って待機するこーくんがいた。 「かずくん、ご機嫌だね。プラネタリウムできた?」 「できた……とっても綺麗だった…………!」 「ふふっ、これからはいつでもプラネタリウムできるからね。良かったね♪」 「うん……!」  僕はプラネタリウムを堪能した余韻に浸っていて、この時彼が僕をどんな表情で見つめていたか、僕はちっとも気にしなかった。                  彼は僕の髪を乾かし終えると風呂に入ると言って僕を残して行ったが、風呂からあがるとリビングでテレビを見ていた僕に優しく微笑んで寝室に招いた。珍しく上半身裸のままで出てくるものだから、僕は彼に手を引かれている間中、目のやり場に困ってずっと俯いていた。    まだ僕は風呂に入っていないのになぁ、と思いながらも流されるままベッドにあがると、彼はベッドの端に腰掛けた。寝室は電気をつけずカーテンも締め切り暗いままで、灯りはベッドの横のナイトライトだけだった。 「…………えっと、一体何を……?」  僕に背を向けたまま、こちらを向かず何も言わない彼に、堪らなくなって声をかけた。 「……かずくんが悪いんだからね……。」  ぼそっと呟くと、こーくんはベッドに上がり、僕を抱き寄せた。何となく、この薄暗い雰囲気にドキドキしてしまう。 「かずくん、今日は朝からずっとずるいよ…………俺、こんなに我慢してるのに……。」  彼の手が僕の腰を撫でた。背中がゾクゾクして、身体を震わせた。 「前に俺が言ったこと、覚えてる……?」 「えっ……?」 「かずくんに初めてあった時にさ、……ぜーんぶ俺にちょーだい?? ……って、言ったよね?」 「あぁ……。」  初対面で、挨拶の次に言われた言葉。忘れもしない。今思えば、僕が人生ではじめて、ダイレクトに、僕の存在を他人から望まれた言葉だ。 「かずくんの身体、欲しい……。」  彼の色気のある掠れた声で、僕の耳元で囁かれる。僕は頭が真っ白になって固まった。身体が欲しいって、どういうこと……? この状況は、なに……? 「ねぇ、ダメ? 最後まではしないし、でもかずくんに触りたい。」  彼は僕に目を合わせると、今にも泣き出しそうな表情でおねだりをする。こんな顔をされると、元来断れない性質の僕は、思わず首を縦に振ってしまいそうになる。それを知ってか知らずか、彼はなおも続けた。 「かずくんに触りたい。舐めたいよぉ……。」  こーくんが僕を抱きしめて、身体を擦り付けてきた。僕は全身を強ばらせて、彼の温もりを感じた。息が荒くて、僕は何となく彼の言っていることを察した。 「さ、触りたいって……僕、男だし…………。」  男女の行為の仕方について、あまり興味はなかったけれど、人並みに知識はある。でも、男同士なんて知らない。今まで流されるように抱きしめられたり、キスをされたりしてきたが、今初めて僕が彼の『そういう対象』であることを実感した。  身の危険を感じた僕は、こーくんから離れようとぐいぐいと身体を押し返すも、一向に彼との距離は離れない。 「大丈夫。男同士だってできるよ。ね、ちゃんと気持ち良くしてあげる。かずくんのこと、どろどろのとろとろにして、いっぱいいっぱい甘やかして、恥ずかしさも忘れさせて、俺以外何も分からなくさせてあげるよ……?」  すると、彼の手が、僕のパジャマの下に入ってきて、直に腰を撫でた。優しい手つきはどこか熱を孕んでいて、 今にも襲いかかってきそうだ。さらに、彼は僕を自分の上に抱き上げると、腰を揺らして僕の尻に身体を擦り付けてきた。すると、熱くて固い、何かが、僕の尻に押し付けられる。   あぁ、やっぱり、ここには僕が彼から逃げる場所は、どこにもないんだな。   「っ……。」  そう改めて自覚してしまうと、何だか諦めの気持ちが僕を支配して、無意識に小さく、首を縦に二回振っていた。彼はそれを見ると嬉しそうに微笑んだ。 「ありがと。……すっごい嬉しい……。」  僕はこの時、自分の浅い知識のおかげで、自分がこれからこの人と何をするのか、イマイチ理解していなかったのだ。だから次の瞬間、深く口付けをされて、その隙にパジャマのボタンが全て外されて上半身が外気に触れたことに、とても動揺した。 「はぁ…………あ……。」  唇が自由になると、するりと肩から落ちるように僕のパジャマが脱がされて僕の上半身が顕になる。この薄明かりの中でも恥ずかしくなって、自分の腕で身体を抱いた。 「ふふっ、可愛い。」 「はぁ、んっ……んぁ……。」  彼の綺麗な顔が僕に近づいてきて、彼の舌が唇を舐めた。そして僕の下唇を軽く吸い上げると、吐息を漏らす僕の口に入り込んできた。ぎこちない動きで彼の舌に自分の舌を絡めていると、急に抱き込まれて、そのまま優しくベッドに押し倒された。ギシ……と二人分の重さにベッドのすぐ下で、軋んだ音がする。  ちゅっ……ちゅく……  そして、僕らの舌が交わる音が寝室に響いている。他には僕が息を荒らげる音しか聞こえない。 「はぁ……かずくん……。」 「あっ……。」  彼が僕の首筋を舐めると、自然の声が出た。その、普段ボソボソと話す自分のものとはとても思えない声に、恥ずかしくなって口を強く結んだ。  僕は防衛本能から彼の両肩に手を添えて、今にも彼を引き離しそうだった。しかし、彼はそんなことはお構いなしに、僕の首筋を舐め、ちゅっ、とキスをし、ちゅうう……吸うことを繰り返している。それがなぜか、くすぐったいというよりももっと別の感覚が僕を襲って、頭がぼーっとした。  いつの間にか彼は僕のお腹や胸元、脇腹を撫で回していて、僕と身体は彼の熱い手によってすっかり全身が熱を帯びていた。  彼のひとつひとつの動作が怖い。怖い、けど、優しい。だから次第に安心してしまう。   「かずくん、ほんと、可愛い……。ここも固くなってるね。」 「ひっ……な、なに……。」  そう言って彼が僕の胸の突起を親指で軽く擦った。すると全身に甘い痺れが走って、身体がビクビクッと震える。 「ふふっ、大丈夫。」  僕の頬を撫でて優しく微笑む。それをぼんやりとした眼で見た僕は、すっかり安心してしまって、無意識に彼の手に擦り寄った。  「んっ……? んぅっ……は、ぁっ……!」  柔らかい感触。見ると、彼が僕の乳首をぺろりと舐めたのだ。 「や、やだっ……それ……ぁあっ……。」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。」  彼の右手はずっと僕の頬を撫でてくれている。しかし左手は指先を彼の唾液でたっぷりと濡らされていて、僕の乳首を優しく撫でた。再び彼は僕のもう片方の乳首を舐める。今度は一度だけでなく、何度も何度も。 「あっ、んっ……んんんっ……はぁ……んぁっ……。」  僕は頬を包む手に縋るように両手で掴んで、顔を擦り付けた。我慢したいのに、声が口から漏れてしまう。すると、彼が僕の乳首を完全に口に含んだ。 「んっ……んぁっ、あっ、やっ……!」  ちゅっ、ちゅうっ……くちゅっ……  彼の親指が僕の口の端から口内に割って侵入してくる。すると、声が漏れてしまう。彼は僕の乳首を舌で転がし、擦り、唇で柔らかく包んで軽く吸い上げる。時々、彼の吐く熱くて荒い吐息が触れる。そのひとつひとつに身体がおかしくなってしまったんじゃないかと思うくらいビクビク反応した。口内に侵入した彼の親指は僕の舌を優しく撫でて、まるで深く口付けをされているようだ。  初めての優しい快楽に頭がついていかない。ただ、身体だけが、彼にされるがままに反応した。   「かずくん、とろとろした顔になっちゃってるよ? そんなに気持ち良かった?」 「はぁ……っ。」  彼は僕の乳首をしばらく堪能すると、息を上げて余韻に浸る僕を見て愛おしそうに微笑んだ。口の中の彼の指はなおも僕の舌を優しく撫でて、僕はだらしなく口を開いて彼をぼんやり見つめた。 「見て、かずくんの乳首。ちょっと可愛がってあげたら、こんなにぷっくり膨らんで、喜んでて、とってもかわいーよ。」 「んぁっ……。」  見ると、僕の乳首は彼の舌にたくさん愛撫されて、先端を固く尖らせて、ねっとりと唾液に濡れて光っていた。そこをまた彼に優しく撫でられると、身体がびくんっと跳ね上がる。 「敏感だね? ここもそろそろ可愛がってあげたいんだけど……。」  僕の様子を見て嬉しそうにクスクスと笑う彼の手が、僕の足の間に伸びてきて、太ももからゆるゆると上に這い上がってきた。その感覚に全身がゾクゾクする。そして、彼の大きな手は、すっかり熱くなってしまった僕の自身を包み込んだ。 「あっ、やっ、そこっ……。」 「嬉しいなぁ。……こぉんなに固くしちゃって、そんなに喜んでくれているんだね。」  彼の肩を掴んでも、ちっとも動かない。僕の口内を犯す彼の指によって抑えられて、僕は上体を起こすこともできなかった。僕の自身は彼に優しく撫でられて、半勃ち状態だったのに、どんどん元気になっていった。それが僕の心と裏腹で、非常に恥ずかしい。その様子を知って、こーくんは僕の自身を見つめた。 「早く触ってほしいよ〜って、言ってるのかなぁ?」 「ち、違っ……。」 「うんうん、早く触ってあげるからね♪」  彼の指が僕の口から糸を引いて離れていく。両足を持ち上げられると、彼は自分の足の上に乗せて、両手を僕のズボンにかけた。そして、僕はいとも簡単にズボンを盗られて、トランクスだけになってしまった。 「や、やだやだっ……!」  僕は両足を折り畳んで隠そうとしたのに、予感した彼に足をがっちりと掴まれてしまう。 「はぁ……かずくん。かずくんのここ、いっぱい可愛がってあげるからね……。ね、いい子だから、俺に見せて?」  彼は僕と両足の間に上体を滑り込ませて僕の自身の目の前に顔をやると、一帯を両手で撫でた。時々自身に触れる彼の手に、僕の自身は正直にビクビクと期待した。もともと性欲がほとんどない僕は、こんなの久しぶりで、とにかく冷静でいたいのに彼に翻弄されて、動揺して、ドキドキしてばかりだ。今だって、こんなに、爆発してしまいそうなくらい心臓がドクドクと脈打ってる。 「んーーー……ボディソープの匂いと、かずくんの匂いがする…………良い匂い……♥ 直に嗅いだらもっと良い匂いなのかなぁ……♥」  彼はあろうことか、トランクスの上から僕の自身に頬擦りし、その匂いを吸い込んだ。恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。どうしてそんなに恍惚とした表情ができるのか、ちっとも僕には理解できない……。 「あのっ、お願いだから……も、やめ…………んぁっ! あぁっ、あっ……!」 「だぁめ。だいじょーぶだから、安心して俺に任せて?」  彼は僕の自身の先端を、指で軽くグリグリと丸く擦った。こんな感覚知らない。人に触れられると、こんな風になってしまうのか……。                

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