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病弱くん、はじめてのお留守番/その3
自分でも味わったことのない刺激に、身体がひたすらビクビクと震える。彼は僕の自身の先端を擦りながら、トランクスの上からであるにも関わらず、横から口を開けてねっとりと舐めた。
「あっ……んぅぅっ……。」
「パンツに染みができてるよ? 後で新しいのに変えないとね〜♪」
彼が僕のトランクスに手をかけた。その両手を掴んで止めると、彼が僕の手にちゅっちゅっと音を立てながらキスをした。
「かーずくんっ。」
「だ、だめだよ……こんな…………んっ……。」
僕の手を彼の舌がねっとりと舐め上げると、くすぐったくて手を引っ込めてしまった。その隙にトランクスを下げられ、僕の腰を上げると、さっさと取り上げられてしまった。僕の両足を自分の両肩に担ぐと前に倒し、僕の秘部が全て顕になる。
「かずくんの身体、ぜーんぶ可愛いなぁ……まだ誰も知らない綺麗な身体だね。」
彼は僕の身体を、熱を孕んだ綺麗な双眸で視姦した。時々彼の瞳の奥で光っていたものは、恐らくコレだったのだ。
「ここも、こぉんなに蜜を垂らして、美味しそう……今食べてあげるからね……。」
「あっ、だめっ、んんぅっ…………!」
先端から彼の柔らかい唇が僕の自身の形を型どるように呑み込んでいく。その感覚に身体全体に、後頭部分に、ゾクゾクとした電磁波が流れた。
じゅぷっ、じゅるるっ……ちゅっ、ちゅぱっ……
与えられる快楽に喘ぎを漏らしながらも恐る恐る彼を見ると、彼も僕を見ていたようで、目が合ってしまった。彼は僕の自身を咥えながら、優しく微笑んでみせた。その表情が、不思議と僕を安心させてしまうのだ。
「ずーっとずーっと、それこそかずくんと対面する前から、かずくんの身体に触りたかったんだぁ。ここも、乳首も、口も、たくさんたくさん味わいたかったんだ……だから今、とっても嬉しいよ。」
それは、良かった……。何となく、そう思ってしまった。彼が今まで、僕に何を望んでいたのか、わかるようでわからなかったから。それはきっと、彼が僕に伝えているようで、伝えていなかったものだ。
じゅうっ……じゅぷぷっ……じゅくっ、じゅぷっ……
何とも卑猥な水音がする。それが僕の自身から発せられているのだと思うと、恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。しかし、それ以上に、初めての与えられる快楽は僕の頭をどんどん、何か別のモノに変えていってしまうように、支配していく。
「あぁっ……あぁぁっ……んぁ、あうっ……。」
僕は次第に、声を出さないように抵抗するのもやめて、ただ彼を感じていた。こんなことダメだとわかっているのに、もう僕の身体は快楽に溺れて自由を失っていた。
「かずくん、もうイきそう? いっぱい溢れてきた……。」
「や、あぁっ……も、怖いっ、怖いっ!」
達してしまいそうな間際で急に心地良かったはずの快楽が恐怖に変わった。何かが本当に自分を支配してしまいそうな感覚に、涙が出た。自分でもびっくりするくらい動揺して飛び起きて、彼の肩を掴んだ。
「かずくん、大丈夫。俺のこと見て? 身体の力抜いて? 」
一度僕の自身から手を離すと、そっと僕を抱いた。自分の上に僕を抱き上げると、優しく頭を撫でてくれて、たくさんキスをしてくれた。僕は彼の腕にしがみついて、また与えられる感覚に頭がぼーっとするのを感じた。
「んむっ……んんぅっ……。」
僕の身体から力が抜けていくのを確認すると、彼の大きな手がまた自身に伸びてきた。
「やっ、あぁっ……!」
「ふふっ、感じすぎて怖くなっちゃったんだよね。嬉しいよ。ほんと、可愛いなぁ〜♥ ほら、気持ち良いね?」
「あっ、あぁっ……だめっ、だめっ……! んっ……んんっ……はぁっ……!」
身体が自分のものじゃないみたいで怖い。でも、またこーくんが優しく口付けをしてくれた。その口付けだけが僕を救ってくれているような気がして、彼の首に抱きついて、一生懸命舌を絡めた。彼はクスッと微笑みながらも応えてくれる。自身が扱かれて、また射精感が込み上げてくる。足がガクガクと震えて、涙が零れた。
「んぁっ、はぁっ……んむぅぅっ……あっ、も、……んっんっ……!」
「イク? 良いよ。かずくんが俺にイカされちゃうところ、ちゃんと見せて?」
手の動きが一段と強く、早くなる。追い込まれている感じがして恐怖が込み上げる。途端に頭が真っ白になって、何かが弾けた。
「あっ、あぁぁっ……〜〜〜〜〜っ!」
彼の首元に抱きついて、大きく震える身体を擦り寄せた。顔を首に埋めると、彼がぎゅうっと強く抱きしめてくれる。
「あっ……あぁ……。」
「うん、うん、もう大丈夫だよ。ほら、いっぱい出しちゃったね?」
彼が僕の目の前に手を見せると、そこには僕から吐き出された白い欲望が、どろどろと彼の手を汚していた。
「かずくん、あんまりこういうことしなさそうだもんね。すっごい量だよ。とっても熱くて、……んぅ、美味しい……♥」
自分の手についた僕の精液を綺麗に舐めとる。その様子を、倦怠感に犯されながら見つめた。恍惚とした彼の表情は、僕が見たあの雑誌には載っていない、いや、とても載せられないくらいの色気が出ていた。そして、僕の尻の下には何やら熱くて堅いものがヒクヒクと僕の尻を刺激していた。
「はぁっ……はぁ、はぁ……。」
それを感じつつ、僕は彼の肩に身を預けて、息を整えていた。しかし、こーくんはずっと僕を抱きしめて、背中を優しく撫でてくれていた。僕の頭に唇を寄せて、何度もキスを落とした。彼の暖かい温もりに、だんだん意識が薄れてきた。
「ふふっ、寝ちゃっても良いよ。今日はありがとうね、かずくん。」
耳元で囁かれるその優しい声色に、頭の奥が蕩けそうだった。そしてそのまま、僕は意識を手放した。
次の日、目を覚ますと隣には美しく微笑むこーくんの顔が目に入った。
「……っ!」
あまりの近さに驚いて目を見張る。身体を離そうとすると、途端に腰に温もりを感じる。がっしりと腰を掴まれて、距離が取れなくなってしまった。
「おはよ、かずくん。よ〜く眠ってたね。」
視界が暗くなったと思ったら、額に柔らかい感触。彼は僕から身体が少し離すと、上体を起こしてベッドに座り直すとパンッと音を立てて両手を合わせた。
「身体は大丈夫? 昨日はほんっっっとうにごめんね……!」
頭を下げる彼に、ぽかんと口を開ける。
「あ、えっと…………あの……?」
「俺、こんなに早く手を出すつもりじゃなかったんだ……もっとちゃんと、かずくんが俺を見てくれるようになったらって…………でもほんと、昨日は我慢できなくって……!」
彼の言葉に、昨夜の出来事を全部思い出した。次第に込み上げる羞恥心に両手で顔を覆って自分の痴態を恥じた。
すると、今にも泣きだしそうな表情で彼は僕の顔を見上げた。
「俺のこと、きらいになった……?」
捨てられた子犬のような彼を見ていると、何かが胸に向き刺さる。
「い、いや……そんなことは…………。」
ここで何か言い返してやれれば良いのかもしれないが、弱気な僕にはとてもじゃないけど誰かに怒るとか、そんな大層なことはできない。どもるばかりの僕の様子を見て、こーくんは再び頭を下げて、両手を擦り合わせて、
「もう絶対にかずくんがちゃんと俺を好きって言ってくれるまで手出したりしない! 絶対絶対! ……でも、昨日は俺のためにかずくんが頑張ってくれたこととか、あんまり笑わないかずくんが笑った顔を見せてくれたこととか、お風呂の機能に小さい子供みたいに目を輝かせてくれたこととか、色々重なっちゃって………………めちゃめちゃ可愛かった! ありがとう!!」
「は、はぁ……。」
もう手は出さないと言っているし、後半の発言で本当に反省しているのかどうかわからない感じになってしまっているけど、まぁいいか……と、彼に対する気持ちは落ち着いた。それでも……
「ぼ、僕の方こそ…………あんな、醜態を、晒してしまって……。」
顔を真っ赤にして恥じらう僕。そんなことよりも自分の痴態を他人に晒したことが、僕にとっては何よりも辛いことだった。しかし、そんな僕とは裏腹に、こーくんは満面の笑みで、
「ううん! もう最高だったよ! 本当に!」
僕の手首を掴んでは、キラキラとどこまでも澄んでいて純粋な双眸を向ける。それでも、こんなイケメンで人生の勝ち組みたいな人にそんな風に言われるなんて訳が分からないなぁ、と思った。もう恥ずかしくてしょうがない。
「かずくん、昨日は疲れたでしょ。もう少し休んでても良いよ。ご飯の用意してくるからさ。」
顔を両手で隠す僕の手を退けると、頬を撫でられる。もう目が合わせられなくて、顔が上げられない。
「あの、僕も……手伝います……。」
「無理しなくても大丈夫だよ? それに、そんな可愛い顔されると、俺も堪らなくなっちゃうなぁ……。」
彼の声が急に低くなる。彼は本当に、色気を出すのが上手くて、頬を撫でられているだけなのに、昨夜のギラギラと光る彼を思い出した。
「あぅ……。」
「あははっ、嘘だよ。そんなに怯えないで? 本当に、もうあんなに無理矢理しないから。これ以上、かずくんに嫌われたくないしさ。」
「だからポイント稼ぎしてくるね〜♪」と言って、彼はさっさと部屋を出て行ってしまった。
僕はと言えば、一度思い出してしまった自分の痴態が忘れられなくて、体育座りで頭を埋めた。今日一日、どういう顔をして過ごしていれば良いのだろう。世の中の人間はどうしているのだろう。恋愛に関して全く経験の無い僕は、そんなことをいつまでもぐるぐるぐるぐる考えていて、気づいた時にはこーくんがリビングの方から「ご飯の用意できたよ〜!」と声が聞こえてきたのだった。
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