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イケメン、約束を破る/その2
扱く手が、かずくんの自身からとめどなく溢れ出る先走りに犯され、それが凄く嬉しい。かずくんが俺を全身で感じてくれているのも、こうしてかずくんに汚されたり、かずくんのものを摂取するのも。こんなに嬉しくて幸せな気持ちは久しぶりだ。お互いの気持ちは悲しいくらいに伴っていないけれど。
「あっ……あぁっ、んっ……。」
そうして、かずくんは俺の手の中で果てた。もう体力が限界なのか、イった後すぐに口付けをすると、そのまま意識を手放してしまった。
「かずくん……。」
俺は自分の熱が収まらなくて、気絶した後のぐったりとしたかずくんの身体中に吸い付いた。
「かずくん、好きだよ……好き……かずくん……。」
次第に全身に広がる俺の印が増えていく度に、意味の無い優越感に浸った。ここも、ここも、ここも、俺が付けた。キスマークを指でなぞり、舌を這わせる。すっかりやせ細ってしまって、ただでさえ細かった身体から骨が浮き出ている。それさえも愛おしくて、また舌を這わせた。それでも自分の昂りを処理しようとは思わなかった。何とかつなぎ止めている理性が、これは性欲処理のためにやっているんじゃないんだぞって俺に囁きかけていたから。
「んっ……。」
しばらくして何度声をかけても起きないかずくんを服を着せないまま、布団をかけて暖かくして寝かせていると声がした。深く眠りに落ちていたのか、ずいぶんと長い時間眠っていたからもうすっかり真夜中だ。やっぱり疲れているんだろう。
俺はその間もずっとかずくんの隣に腰掛けて、頭を撫でて、ぼんやりとその寝顔を見つめていた。時々隣に寝転んで抱きしめて、匂いや感触を堪能した。四六時中眺めてても、触れていても、ちっとも飽きない。それよりも、今確かにかずくんが隣にいてくれているという安心感で満たされた。
声がしてからかずくんを見ると、うっすらと目を開けて天井を眺めていた。薄暗い室内で俺を見つけたけど、まだ寝ぼけているみたいでぼぉっとしている。顔を覗き込むと、久しぶりに目が合った。まだ頭が覚醒していないのか、どういう状況なのか理解していないみたい。不思議そうに俺の顔を見ているのが堪らなく可愛い。
「かずくん、一緒にお風呂入ろうか。」
優しく頬を撫でて額にキスをした。すると、だんだん頭が回ってきたのか、少し悲しそうな表情をした。
「ね?」
かずくんの耳をねっとり舐めると、かずくんの身体がビクビクと震えた。しばらく耳を愛撫してから布団を剥いでかずくんを抱き上げた。
かずくんの服は全て脱がせてしまったので先に風呂場のイスに座らせてシャワーを出してあげてから、俺も脱衣所で服を脱いだ。戻ると、かずくんはシャワーに手をかけず、ぼんやりとしながら座っていた。意識がはっきりしないのか、それとも疲れきっているのか、全然表情が読み取れない。
俺は身体も髪も洗ってあげた。身体を触ったら少しビクッと怯えたが、「大丈夫。洗うだけだから。何もしないよ。」と優しく囁いて、できるだけゆっくり身体を洗った。見ると俺がつけたキスマークがたくさん見えて、幸せな気分になった。先にかずくんを洗い終えて温めておいた浴槽に浸からせると、自分も素早く洗って浴槽に浸かった。後ろから抱きしめて、陽に焼けていない真っ白なかずくんの首筋に顔を埋めた。
「んん〜〜〜……♥」
思わず声が出た。身体を包み込む熱やかずくんの柔らかさが心地好くて、思わず寝てしまいそうだった。眠りそうな薄い目で前を見ると、かずくんの腕が口元に上がっていた。見ると、虚ろな目で右手の人差し指の、第二関節から第三間接辺りを何度も何度もガジガジと噛んでいた。よく見ると人差し指が全体的に噛み跡で傷だらけだった。
「かずくーん。」
後ろから手を回して、手首を掴んで口元から離した。かずくんが少し顔を動かして手首を掴む俺の手を見た。
「噛むなら俺の指、噛んで良いよ。」
そう言って人差し指を口元に差し出した。俺の指をじっと見ている。
「ほら、良いよ?」
唇のほんの近くまで指を寄せても全然口を開かないので、かずくんの唇をぷにぷにと触った。
「…………。」
非常に長い時間の沈黙。俺からはかずくんの表情が見えないけど、相変わらず身体は緊張で強ばっていた。
「……っ。」
その間も触り心地が気持ち良くてずっと唇をぷにぷにしていると、ふと口が開いたのでその隙に人差し指を口に入れた。
熱くて柔らかい口内に人差し指を這わせた。歯裏や舌を優しく擦って、まるで指とキスをしているみたいだ。それがとっても気持ち良くて、俺は肩に舌を這わせてうっとしりた。
「俺、かずくんになら痛いことでも辛いことでも、何されても良いよ。」
そう言って一度人差し指を口内から出した。そしてもう一度指を唇に寄せると、小さな両手に手首を握られる感触がした。
「………………そんなことできない……できないよ……。モデルさんの、大事な指でしょ……。」
本当に小さく、耳を済まさないと聞こえないレベルのボリュームだったけど、確かにそう言うかずくんの声が聞こえてきた。ようやく言葉を返してくれて、すごく嬉しかった。
「ふふっ……そっか。」
そう言いつつ、かずくんの優しく手を握った。少し逃げようとしていたけど、俺に捕まると抵抗をやめた。
「……かずくん。俺、かずくんのこと、加藤さんから聞いちゃったよ。彼女、とっても心配していて、マンションの下まで来てたんだよ。」
「………………。」
返事はない。それでも何か思っているのか、背中を丸めて俯いた。
「でも、かずくんの口からちゃんと聞きたいな。かずくんが今までずっと独りで溜め込んで苦しんでたこと、俺に教えてくれる?」
「……………………。」
しばらくかずくんからの返事を待ってみたけど、俯いているばかりで一向に何も返ってこない。それがかずくんの答えなのかと思って、俺はかずくんの手を離して、強く抱きしめて、かずくんの肩に顔を埋めた。
「ごめん……俺じゃあ信用できないよね。かずくんの気持ちが向いてくれるまで手を出さないって約束も破っちゃっしたし…………びっくりさせちゃったよね。それに傷つけちゃったかも………………でも、お風呂からあがったら、俺の話、聞いてほしいんだ。かずくんにちゃんと伝えたいことがあってさ……聞いてくれるかな?」
またかずくんの返事を待って、沈黙した。すると、ほんの一瞬、俯いていたかずくんの頭が上下した。
「ふふっ……ありがと。」
それが嬉しくて、俺はまたかずくんを優しく抱きしめた。
かずくんが逆上せる前にお風呂から上がって服を着せてあげて、髪の毛を乾かしてあげた。かずくんは少し怯えることがあってももう逃げたりはしなかった。お風呂に入る前よりも頭がハッキリしているみたいで、その表情は混乱している感じではなく、ただただ俺に触れられるのが悲しそうな表情だった。
「こっちにおいで。」
ひと段落すると、俺はかずくんをある場所に招いた。かずくんはどこに連れていかれるのかわかっていないみたいで、後ろから距離を置いてゆっくりついてきた。
そこはまだかずくんを招き入れたことのない部屋。その前で立ち止まった。振り返ってかずくんを見たが、この様子だとこの部屋に入ったことはないらしい。
それが、俺には好都合だった。
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