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スプーン 快晴 金平糖
「…なぁエル」
正木が先生に呼ばれ傍らに居ない時、Ωの僕にαの高瀬が近付いた
高瀬はΩを沢山囲い、ハーレムを作ろうと公言する様な変態だ
しかしその変態高瀬とは、何の因果か『運命の相手』なのである
αに首筋を噛みつかれると番になってしまう為、それを阻止しようと、恋人となったβの正木はいつも僕の傍にいるのだけれど……
「お前少し前までヒートしてたんだよな」
運命の相手だからか、発情期程ではないけれど、気持ちとは裏腹に触れて欲しくて体が疼いてしまう…
「う、…そうだけど」
警戒しながら答えると、高瀬はニヤついた顔のまま金平糖の入った小さな小瓶を見せた
「…コレやるよ」
キラキラと輝く色とりどりの砂糖菓子に、思わず僕は目を引いた
高瀬がそれをひとつ取り出すと、ニヤニヤしながら僕の口に当てる
「食えよ」
「……!」
片手で顎を掴まれ、無理矢理僕の口に入れる
口の中で甘く甘く広がる…
蕩けて…トロトロに…
とろとろ…
「……え」
ぱちん、と目を開く
ふわりと浮かぶ僕の上に、高瀬が乗っていた
天井は雲ひとつない快晴…
…おかしい…
おかしい……
高瀬は僕の片膝をぐいっと上げる
「気づいちゃった?」
高瀬の手にはキラリと光るスプーンがあった
それを僕のソコに宛がう
「……やめてっ!」
そう叫ぶけど、青空がぐるぐると回って酔いそうになる
…助けて、助けて…
正木……!
その時、ドアの開く音がした
ふわふわした体は
いきなり冷たい床に叩きつけられる
脳内に血が滲むような感覚に襲われ
船酔いでもしたかの様に胸焼けを起こし、吐き気を催す
「…エル!」
重い瞼を上げると、霞んだ正木の顔が見えた
「…まさ、き」
「ごめん、俺が居なかったせいで……」
上体を起こし顔を顰めた正木の手を取る
「…僕、が……ぅっ、!」
体を折り曲げ、嗚咽に耐える
「高瀬が持ってたコレ、促進剤らしい……無理矢理発情させようとするから、強い副作用が出るみたいだ」
そんな僕の背中を擦る
しかしその行為が、僕の体に熱を灯す
ゾクゾクとした快感が駆け巡り、瞳が潤む
「……ゃ、あっ!」
羞恥に耐えるけれど、薬が効いてる体は容赦ない
「正木、ダメ…触っちゃ…」
「……エル…」
様子のおかしい僕に気付いた正木は、喉を鳴らすと僕の熱い頬に触れた
「……ゃあ、」
反応して開けた唇に、正木の唇が触れる
そして瞳から流れた涙を、正木は頬に触れた親指で拭ってくれた
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