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傘 瞬間 シャンプー
玄関を開けると、そこにはびしょ濡れの正木がいた
傘を持たずに外出し、雨に降られたのだという
タオルを渡し、簡単に拭いた正木をお風呂場に押し込めた
その間、僕は正木に着替えを用意しお湯を沸かす
「…助かった」
ドライヤーは掛けなかったのか、正木の髪が湿っている
テーブルの前にあぐらをかく正木にコーヒーを出す
その瞬間、正木からシャンプーの匂いがした
「……!」
胸の中が柔らかく締め付けられ、顔が熱くなる
…触れて欲しいな…
視線を外し、そう思ってしまった事にはしたないと思った
そんな僕の様子に気付いた正木は、コーヒーを飲む手を止めた
「…エル?」
「え…」
「どうした?……まさか、」
「………」
羞恥に顔を赤らめた僕は、正木から顔を逸らした
「俺βだから、そういうの敏感じゃなくて…」
「…違うの」
正木の言葉を遮る様に言う
「発情期なんかじゃなくて…その……」
正木の近くに正座した僕は、膝の上で指を弾く
もじもじとした様子を見た正木は、少し驚いた視線を僕に向けた
「…エル」
床に片手をつき、正木がもう片方の手を僕に伸ばす
それは僕の熱い頬に触れられた
「恥ずかしがんなよ…すげぇ嬉しい……」
正木が潤む瞳で顔を近付けてくる
それに答えようと、僕も正木の方を向いた
……ん…
ベッドに倒された僕は、正木の重みを感じながら深いキスを交わした
その唇が離れると、僕の喉元に軽く当てられ、そして鎖骨へと移動する
「……あ」
遂には胸にある小さな尖りを含み、僕の体が小さく反応する
…あ、シャンプーの匂い
正木の匂いと熱も混ざり、僕の胸を優しく一杯にする
正木の手が僕の手を掴み、指を絡めてそっと握る
それに答える様に、僕も握り返した
「…まさき」
とろりと蕩けそうになる僕の顔を正木が覗き込む
「エル、エロくて可愛い」
「やだ…」
正木の少し開いた唇が再び僕の唇に押し当てられる
口内に侵入した正木の舌に、おずおずと舌先を差し出す
それは甘い蜜と共に絡まり、僕の中に押し流されていく
…正木、好き……
気持ちが満たされる度に
体の力が解けていく
…好き、好き、大好き……
溢れた気持ちが、目尻から涙となって零れた
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