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第9話 く

 閉まりきっていない扉に瞬時に手を挟んだ。 「有安さんですか?有安さんですよね?」 「だったら何なんだよ」  舌打ちが返ってきた。 「有安さんに何してるんですか。返してください」 「返してくださいって、アンタの?・・・・ああ、なるほど。そういうカンケー?」  いいだろう、と言いたげにその男は扉を開けて、高宮を中に引き込む。高宮は奥に急いだ。男が後ろ手に鍵を掛けたことにも気付かず。  階が違うだけで内装が高宮自身の部屋とは違っていた。マンションのように玄関から居間まで少し廊下がある。そしてその間に小さい浴場とトイレがある。居間ともう1つ部屋がある。高宮の部屋2つ、3つ分くらいの面積はあるように思える。 「有安さん・・・・」  廊下を抜け、すぐに目に入ったのは全裸で寝転ぶ有安。真っ赤なテープで両手足を縛られている。そうしてそれを囲む数人の男。デジャヴに目眩がした。 「有安ぅ。カレシいるなら言えよな~」  裸足で有安の顔を軽く踏みつけ、そしてその足で髪を撫でる。 「・・・・・っ」  言葉を失って立ち尽くす高宮を、有安は見上げた。 「彼は・・・・・・」  有安が言いかけて、止める。 「あ?・・・・・押さえろ」  短髪に吊り目の男は周りの男に命令した。周りの男は高宮を押さえ付けだす。 「神津っ!」  有安が非難するような視線を短髪に吊り目の男に向けた。 ――神津・・・・・・?    衣澄の言葉が甦る。「F組の神津という奴には関わるな」。神津・・・・。

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