28 / 109
第28話 ひ
次の日、神津に指定された通り、3時限目が終わる時間に屋上に向かった。衣澄には早退だと嘘をつかなければならなくて、良心が痛んだ。
「神津君」
屋上の扉が開いた。
「・・・・偉いな。よく来たもんだ」
柳瀬川は高宮と神津のやりとりを苦く見つめる。
高宮が神津に近寄っていく。柳瀬川にはホラー映画のホラーシーンを警戒しているような気持ちだった。
「傷は・・・大丈夫・・・なのか・・・・?」
柳瀬川が気まずそうに声をかける。
「うん、ありがとう、柳瀬川君」
人のよさそうな笑顔に罪悪感で胸が締め付けられる。そう感じたのは柳瀬川だけで、神津は何とも思っていないだろう。
「来い」
屋上から第二校舎に通じる渡り廊下がある。その渡り廊下を渡って最寄の階段で一階にいくとすぐにあの多目的室がある。
離れて後ろを歩く高宮を見遣ると、柳瀬川は神津を捕まえて、耳元で囁く。
「どうして高宮をそんなに嫌うんだ」
「柳瀬川。俺はお前と昔から一緒にいるけど、お前が俺の何が分かるって言うんだ?俺が高宮を嫌っている?そう見えたか?今からこいつにこの世のものとは思えない快楽を与えてやるんだよ」
神津は時々、何を考えているのか、何がしたいのか、分からなくなる。この親友の非行を止めたい。しかし自分も楽しんで手を染めてしまっている。共犯。止める資格も、権利もない。
「そうか・・・・・」
汚れている、身体も。心も。何もかも。柳瀬川から自嘲的な笑みが漏れた。
桐生のときもそうだった。穢れのない身体を壊して散々に・・・・
そして樋口のときも・・・・
「柳瀬川。いい子ぶるなよ」
「悪い」
機嫌を損ねてはいけない。自分も神津と同等だと思っていたのに。自分は奴隷だったのか。柳瀬川はそう実感し、諦めたように笑った。
ともだちにシェアしよう!