31 / 109

第31話 ほ

 奥まで強引に挿入され、そこで熱が爆発した。欲望が胎内に広がる。背中に蒸れた男の筋肉が覆い被さった。 「いっやだあああああ!いやだ!いやだあああああああ!」 「うるせぇよ!てめぇは6万で売られたんだよ!」 「女じゃねぇんだから別にいいだろ」  ナカのモノがずるりと抜ける。次にまた熱が侵入してくる。 「6万だよ、6万。イイ夢みせてくれよ?」 「高宮ちゃんの前立腺はどーこだ?」  太った無精髭の男は先端を腸壁に沿うように挿入してくる。 「・・・・抜いて・・・・もぉ・・・・・嫌ぁ・・・」  シーツを握りしめた。 「気持ちいい?」 「何しても気持ちいいだろ、この変態なんて」     「ほら、銜えろ」 「首絞めるとすっげぇ、締まる・・・・・っ」 「高宮ちゃん、イキたい?」  知らない人間。知らない場所。知らない快感。      誰もいない。誰もいない。寒い。怖い。助けて。    自分の、他人の・・・全然知らない男の精液が腹の上に、ナカに。気持ち悪い。  強引に左右に開かれたワイシャツはボタンが弾けている。スラックスと靴下、ベストは少し離れたところに散らかっている。手を伸ばしても届かない距離だ。動く気力もない。  こんな知らない場所で、どうやって帰るんだろうか。あの人たちはどこに行ったのだろう。帰ってきたらまた犯されるのだろうか。逃げよう。逃げたい。逃げられない。   微かな記憶の中で、自分を見つめるレンズ。パシャパシャと鳴る光。過激になっていく暴力。奥まで突き刺してくる男のモノ。 「寒い・・・・・・」  鼻の下がむずむずとして、拭ってみれば白いワイシャツが赤くなっている。 「鼻血・・・・」  顔を何度も殴られたときに出たのだろうか。 「あ・・・・・あうう・・・・ううう・・・・・・」  悲しい。怖い。痛い。気持ち悪い。涙が溢れてくる。    ガチャ・・・・ ――帰ってきた・・・・・?   「おい6万」  冷たい声。自分を売った奴の声。けれど怒りの感情も湧いてこない。 「・・・・・・・」  返事をするのもだるかった。 「ここか」  神津が高宮のもとまでやってきた。取り巻きも柳瀬川もいない。 「・・・・・」 「6万、ああ、それから2万追加されてるから8万か。おめでとう。それでコレ、なんだかわかるか?」  仰向けで寝ている高宮の身体に影が生まれる。神津の形をした影だ。 「・・・・・」  高宮はゆっくりと頭を振った。神津の手の中にあるのは小さな四角形のプレートだった。 「乱れたお前を撮影した動画、画像だ」  身体が疲れているからか、この時はまだ大したショックは受けなかった。  神津は少し間を置いて、じっと高宮を見つめてから、笑った。 「・・・・・・ローター、入れっ放しかよ」  振動を続けたままのローターの音が神津の耳に聞き取れたのだろう。 「・・・・・・じゃぁな。また今度」  神津はそのまま高宮の視界から去っていた。    怖い。怖い。怖い。  ずっと天井を眺めていた。目の前が真っ白になって、歪んでいく男達の声と顔。ぼーっとしていると男達はいつの間にかいなくなっていた。終わった、というこの安心は夢なのだろうか。  振動したままのローターが動いて前立腺に当たる。身悶えて、そんな自分が虚しくまた枯れた涙が零れた。

ともだちにシェアしよう!