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第36話 も
*
「何が目的なんだ」
「何がって・・・・・何」
帰り道に衣澄がそう訊ねた。
「お前が神津とツルんで、樋口に暴行しているのは有名な話だ」
「・・・・・有名なんだ」
「高宮を、どうするつもりなんだ」
「・・・・・どうするつもりもないよ。俺は高宮と一緒にいたい。そう思い始めてきてる」
「桐生は無事なのか」
「彼には、申し訳ないことをしたと思ってる・・・・」
桐生と柳瀬川は一時期、付き合っているという噂が流れていた。実際付き合っていなかったし、大して接していなかった気がする。どちらかといえば神津や樋口のほうが桐生と一緒にいるところを周りの奴等は見ているだろう。
神津と衣澄と桐生は幼馴染みだった。けれどある事情で神津は幼い時に2人から引き離された。柳瀬川はそれを知っている。
「申し訳ないと思ってるなら・・・・・・っ!」
怒鳴りそうになる自身を抑え、大きく溜め息を吐いた。
「樋口は、どうなった」
いじめに遭っていた樋口を神津たちと輪姦したのは半年以上前。輪姦したと言っても柳瀬川自身は男相手では興奮するどころかむしろ萎えたし、弱みを握るための撮影係だったり、ただの傍観者でしかなかった。
学校でも恐れられている神津の唾のついた樋口をいじめるものはいなくなった。しかし、彼を襲ったのは孤独か性的なコミュニケーションだった。
「さぁ。飽きてきてると思うよ。神津は。寮内にホモかバイしかいないっていうのも異様な光景だった」
「あいつらとは関わらない方がいい」
「珍しいな。お前が俺の心配なんて」
「お前の心配をしているつもりはない。お前が高宮と関わるのなら高宮が心配なだけだ」
「・・・・干渉すんなよ。いとこってだけで。オトモダチ付き合いをあーだこーだ言うな」
「わかった。・・・・・これ以上何も言わない。ただ、高宮を傷つけるのなら、許さない」
「高宮を傷つけるなら」。もう傷付けているのかもしれない。自分を拒絶する高宮、布団の中で泣く高宮を思い出すと胸が痛んだ。
「・・・・・・・おう」
「もう、失いたくないんだ」
衣澄の小さい一言が柳瀬川には重かった。桐生のことだ。
遠回しに責めているのを柳瀬川は分かっていた。
「衣澄」
「なんだ」
お互い、お互いの顔を見ようとは思わなかった。
「もう、戻れないんだよ、俺達」
「・・・・・戻って来いよ」
昔から仲は良くなかった。
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