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第50話 H
扉が開く音に高宮の意識は現実に戻った。
「失礼しま~す。誰もいねぇんですかぁ~?」
長身の男子生徒が両手をポケットに突っ込みながら保健室に入ってきた。本棚があるところは入り口から死角になっている。
「お、いるんじゃん」
サンダルの色から3年だと判断できる。その3年は高宮を見ると、近寄った。
「高宮くん、だよね?」
何故だか一方的に名前を知られているということに嫌悪感が拭えない。
「ち・・・・ちがっ・・・・・」
咄嗟に否定してしまった。3年が向けてくる笑みに不安を覚え、後退る。手にしていた本が落ちた。
「サンダル、名前書いてあるよ」
そう言われその3年のサンダルを見る。名前は荻堂。顔は笑っていたが、目は笑っていなかった。手を伸ばされ肩を抱かれると、カーテンが中途半端に開かれ、布団の乱れたベッドに引き摺られ、押し倒される。高宮は暴れた。その度にスプリングが軋む。
「うるさいね」
荻堂は自分のネクタイに手を掛け、外した。運動部であった時期はそう遠くはないため高宮には逃れる自信があったが、荻堂の力も強かった。簡単にベッド柵に縛られてしまう。荻堂はベッドと素直に接している引き出しからガムテープとビデオカメラを取り出した。高宮に見えたのはその2つだけだった。そして高宮の死角でごそごそと作業を始めた。
「ちょっと頼まれごとでね」
胡散臭い笑みを再び浮かべ、高宮の口をガムテープで塞いだ。
「僕ちん、男は初めてなんだよ~。怪我させちゃったら・・・・・・・ごめんね?」
ジャケットの前を開き、ネクタイを外され、ワイシャツの前は全開にさせられる。
「ひゃめて・・・・・」
布製のガムテープの粘着力は強く、口を動かしただけでは剥がれる様子もなかった。視界が滲み出し、鼻がつまりだしてきた。
荻堂はまるで人形の相手をするように淡々とスラックスとトランクスを脱がせた。
「ヤロウを好き好んで脱がすってのも、なんか微妙だなー」
「ひょれなら・・・・・もぉ・・・・・」
荻堂はボトルを引き出しから取る。100円均一で買ったような少し濁った白い本体にオレンジのキャップ。蜂蜜シロップのボトルのような形だった。それを高宮の腹の上で逆さにする。粘り気のある透明な液体がゆっくり垂れてきた。
「ふぅ・・・・・っ」
腹に広がる冷たさに吐息が鼻から漏れる。
「男の喘ぎ声なんざ聞きたくねぇの!」
荻堂は高宮の鼻を摘まんで子どもっぽい表情と声でそう言った。次に荻堂は自分のスラックスを下ろすと、小さな正方形のアルミの袋を破く。その手は覚束ない。
「今まで何人とヤった?」
「・・・・ん・・・・よにん・・・・れ・・・」
口の中で曇る声に高宮自身が焦れた。口を覆うガムテープが痛痒い。
「そっか」
興味なさそうに荻堂は屹立に薄手のゴムを被せていく。
「いい匂いする?イチゴの匂いするはずなんだけど」
鼻は詰まり、匂いは届かない。
「味も多分、するんじゃないかな」
荻堂が目の前に小さな箱を見せた。ピンク色の箱の中心にイチゴの写真が載っている。
「ま、男に舐めさせる趣味ないから別に味わうことないんだろうけど~」
荻堂は高宮の腹から透明の液体を掬いだす。小さな気泡が液体の中に入っている。
「ローションも結構これいい匂いすんのな。なんだろ・・・・バラか?」
指についた液体を高宮の鼻に近付けた。匂いは鼻が詰まってやはりしない。高宮が適当に頷いておいた。
「ごめんな・・・・。余裕なくなってきた・・・・・っ!」
今までのローションやコンドームの穏やかな会話が嘘のように、息詰まった声を荻堂は上げた。ローションを大量に下半身に垂らされる。
「・・・・・・いっ・・・・!」
胎内に重苦しいものが迫ってくる。慣らされていない粘膜が悲鳴を上げる。
「ああああああっ!ううううううう」
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