70 / 109
第70話 ロ
「てめぇの出したもんだろうがよ!」
神津はげらげらと笑い、高宮のズボンを下着ごと乱暴にずり下ろす。引き締まった臀部に神津は舌なめずりした。
「それで、荻堂センパイにはどうヤってもらったんだよ?」
愉快そうな表情で神津を見る。高宮は、はっと神津を見た。
「俺が飲ませたんだよ。媚薬をな。あーあー。可哀想。可哀想。理性を保てず強姦事件起こしちゃいました。バスケ部は夏季大会出場停止だな」
高宮は首を振った。衣澄が脳裏に浮かんだ。学校に告白するつもりはない。だからバスケットボール部が活動停止になることはない。
「ま、男に犯されました、なんて言えないよな?ま、チクっても俺にデメリットはねぇし」
神津は高宮の吐瀉物を掬い、臀部の窄まりに持っていく。高宮はただ首を振り続けた。衣澄の足だけは、どうしても引っ張りたくない。
「ドンマイ。ドンマイ。この学園じゃよくあることだけどなー。世間じゃそうもいかねぇもんなー?」
床に性器が当たる感覚が冷たい。情けない。顔だけは熱い。
「荻堂センパイ、罪の意識に縛られて、退学しちゃうかもー」
拳を握りしめて、羞恥に耐える。神津は笑いながら高宮の腸内に指を挿入した。
「たすけ・・・・て・・・・・いやぁ・・・・・っ」
「みんなそう言うよ。やめてくれるってマジで思ってる?」
高宮は腰を高く上げさせられた。体内を覗くような神津の息が、指を挿入されているところにかかり、身を震わせる。
「ま、お前じゃなかったらやめてやってもよかったけど」
「いやああああああッ!」
前立腺を突かれる。灼けるような嬌声が喉を走る。身体の力が抜け、顔を吐瀉物の池に埋めてしまった。
「殺してくれって言えよ。殺してやるから。全校生徒にマワされてからな」
「ふぅ・・・・・・ぅう・・・・」
頭部を強打したせいなのか、涙が止まらないせいなのか、頭の中ががんがん鳴り響くように痛い。
「殺してやる。殺してやる。早く殺してくれって言えよ。楽に死なせてくださいってよ」
自身の吐き出したものはまだ生温かかった。鼻に届く匂いに再び吐き気を催す。
「いやぁ・・・・・!」
「助けでも求めてみたらどうだ」
前髪を掴まれ、顔を上げさせられると、吐瀉物で汚れた頬を舐める。躊躇いもないその行動に寒気がした。他人の吐瀉物を舐め上げたのだ。
「てめぇも舐めろ」
前髪を放し、傷だらけの血に塗れた左腕の高宮の口元に持っていく。高宮は神津を見上げ、首を振る。神津はにやりと冷ややかに口の端を吊り上げ、また前髪を掴んだ。
「舐めろよ」
傷口はまるで目のように高宮を見つめた。真っ赤な眼球が無数に神津の腕にある。そこからだらだらと垂れる真っ赤な涙。左腕が痛みに悲鳴を上げているようだった。高宮は目を閉じ首を振り続けた。神津の右腕が前立腺を圧迫してくる。唇を噛んで耐える。
「お前は服従しない。・・・・後悔しろよ。それでから死ね」
身体中に鳥肌が立つ。寒くて震えた。目の前にある真っ赤な神津の左腕にそっと舌先で触れる。傷口の凹凸を舌先で感じた。
「反抗する気も失せたか?もう遅いけどな」
意地悪を言う子どもの口調だ。これ以上怒らせないように、丹念に舌先で左腕をなぞる。口内に鉄の味が広がった。開いたままの傷口に涙が滴る。
「助けてください。助けてください。助けてください。助けてください」
高宮は何度もそう言った。舐めながら。神津にこの懇願は届いたのだろうか、ただ黙ったままで高宮を見下ろす。
「助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください」
「アイツはお前のために、助けてください、なんて一度も言わなかった」
神津のいう「アイツ」が高宮には誰のことなのか、全く見当もつかない。
「助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください。助けてください」
ともだちにシェアしよう!