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第73話 ホ

「調子、悪い・・・・のか・・・・?」  声は平静を装っているようだったが、表情は焦り、眉間に皺を寄せる。 「あぅ・・・あ・・・」  自身を強姦した男の脚に高宮は縋りついた。すでに高宮の中では理性より肉欲が勝っていた。 「抱い・・・・てくださ・・・・抱いて・・・・・・・」  シャワーが耳の裏に当たって、大雨が降っているという錯覚を起こす。自身を強姦した男・荻堂の顔を見上げると、戸惑った表情を浮かべ、今にも泣きそうだった。 「おね・・・がい・・・・・」  荻堂は屈み、高宮の両肩に手を乗せる。高宮は潤んだ瞳で荻堂を見つめた。 「・・・・・高宮・・・・・」  荻堂は困ったな、とすぐに視線を泳がせていると、高宮は荻堂の形のよい唇を噛み付くように奪った。 「っふ」  声を漏らし、荻堂は床に押し倒される。高宮のところから流れ出るシャワーの湯が排水溝に吸い込まれていく。 「やめっ・・・・」  荻堂の背中に排水溝に吸い込まれていくシャワーの湯がぶつかった。冷たい床とまだ温かい湯に、荻堂は現実から思考を離した。 「うんっ・・・やめ・・・・!」  荻堂の口腔を高宮は舌先で(まさぐ)る。荻堂の口の端から2人分の飲み込みきれない唾液が溢れて零れた。虚ろな瞳で高宮は口を放すと、2人の唾液が糸を引いた。 「抱いてください・・・・・じゃなきゃ・・・・」  息苦しかったのか、荻堂は息を大きく吸おうとすると、湿気を吸い込み、咳き込んでいる。 「脅す・・・・か・・・・?」  けほけほと咳き込みながら高宮を見る。怯えた表情だった。薄めのラテン系の顔立ちがどんな表情をしても整っている。  高宮に脅すつもりは一切なかった。けれど身体が疼いて仕方がない。荻堂の負い目を利用した。  荻堂は覚悟を決めたと言わんばかりに立ち上がり、高宮の腕を引っ張り立ち上がらせると、壁に押し付ける。シャワーの音が耳から離れない。荻堂は首筋から鎖骨、腹筋に唇を落とすと、緩く立ち上がっている高宮のソレに舌を這わせる。高宮は右手の指を噛んだ。

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