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第3話 回想

  色とのセックスは死ぬほど気持ちよかった。ほかの誰かと比べたことはないが、色ほど上手なヤツはいないと僕は思った。脳裏に星玻のことが思い浮かばないのは、星玻が僕の特別だから色と比べるのは失礼だと思っているからだ。だが、ソレはそのときになるまでで、僕は僕が思っていた以上に色に浸食していたようであった。 母さんに僕らのことがバレたのは、ソレから半月も経ったなかった。風呂場でせっせとヤっている最中にばったり鉢合わせして、その場で散々絞られたのだ。その間、色が大いに泣いて泣きまくって、ソレはもう母さんを困らせた。 そのせいか、僕らの関係は兄弟ではなく、恋人同士になって、僕は母さんと色の前では色の恋人の振りをするようになった。このとき、少しでも星玻のことを考えていたら、ああいう結果にはならなかったんだと後悔するのである。この先のことをココでいっても仕方がないことだが、そういうことだから仕方がない。 母さんが悪いわけでも、色が悪いわけでもない。色と恋人ゴッコをしている僕が星玻のことが好きで好きで仕方がないのが、悪かったのだ。そして、色の優しさや甘さにつけ入った僕が悪かった。だが、いまさら色との行為を拒めないのも事実なのだ。宙ぶらりんで、どっちつかず。僕がはっきりとしなかったから、バチが当たったんだと僕は思う。 ソレは兎も角、近親愛や同性愛を受け入れられない母さんが僕を許したのは、母さんが陽香さんに甘かったから色にも甘かったという、ソレはもう単純なモノだ。色が許してと母さんに懇願しなかったら僕はいまごろ海の藻屑になっていただろう。そう考えると、なんだか虚しく悲しい気持ちになった。  

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