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第8話 狭間2

  「目、覚めた?」 僕の喉が潰れて声がでなくなったかわりに、色の口からちゃんとした言葉がでるようになっていた。口パクで「どうして?」そういうと色が笑って、そんなことどうでもイイでしょうという。 どうでもイイわけがない僕にとっては喰いついて聞きたいところだが、今日から大学が始まる。一年遅れで高校に進学しているから同い歳の友達はみなは一年先に就職したり、大学や短大、専門学校に通っていた。当然、星玻も僕より先に就職か進学をしているに違いない。 星玻との差をコレ以上開けたくない僕は立ち上がろうとするが、その儘崩れ落ちる。尽かさず、色が身体を支えてくれたから、床と顔面衝突はしなかったが恥ずかしいの一言だった。僕はありがとうと声なき声で礼をいって、色から離れようとする。 色はそんな僕を離そうとせず、僕を横抱きにして立ち上がった。キッチンに運んでくれるんだと思ったら、風呂につれていかれた。そういえば、昨日散々ヤりまくって身体が汗と精子でベトベトだということに気がつく。 色に服を脱がされ、色も服を脱ぐから僕は慌てて首を振った。今日はダメと拒んでいたら急に浴室のドアが開いて、星玻が裸体で出てきた。風呂に入っているのだから、裸なのは当然だが、こういう鉢合わせは母さん以上に恥ずかしい。 「あ、次入る?」 当然のように星玻は色にそういい、僕と色に浴室を譲る。色は僕を抱え上げて、当然星玻に脱衣場を譲るのである。そして、すれ違いざまに星玻の刺々しい言葉が耳に刺さった。 「月坡のウソつき………」 あのやるせない瞳で僕を射抜く。ボクだけじゃなじゃったの?そういう鋭い眼光は一度もみたことがなかった。怖いという感情と嫌われたくないという感情がない交ぜになって、僕が顧みようとしたら、色に唇を塞がれてしまった。 「ほどほどにね、兄さん」 色の顔をみて、星玻がそういう。そういうのに、僕に向けられる眼差しは痛いモノがあった。あのときのように唇に痛みが走る。がりっと犬歯で噛まれる痛みは相当なモノで、僕は色をみた。恐ろしく整った顔が無情になった色の顔は恐ろしい。ぞくりと背筋に流れる寒気がその場を凍りつかせた。 無言で閉まるドアが冷たかった。床に下ろされ、ドア向こうからドライヤーの音がする。なのに、色は僕に四つん這いになれというのだ。その間、色はシャワーの温度を設定して僕の身体にお湯をかけようとする。 いつもなら優しく抱きしめて洗ってくれるのにと色の方をみて、だが、色にいわれた通りに四つん這いになるしかなく、四つん這いになりかけるが、やっぱり四つん這いは嫌だと僕はいつもする体勢で色の膝上に向き合って跨がった。色になにをいわれても構わない。いまは色の温もりが欲しかった。 文句をいわれる前に、僕は色の首に腕を廻してキスをする。ドア向こうには僕の大好きな星玻がいるのに。今日から大学があるというのに。僕のキスは深くねっとりとしたモノに変わっていた。 そして、反り立ってくる僕のモノを色の腹に押し付け、ねだるように腰を振る僕。こんなことするつもりはないのに、身体が勝手に動いた。 「…………い……………ろ………」 早くしようと誘うが、色は僕の中を洗って頭と身体を洗うと僕を抱えて湯船の中に入る。完全にできあがっている僕は湯船の中でするのかと色に抱きつくが、色は僕の髪を撫でたり首筋を撫でたりするだけでなにもしてこない。どうして?と泣きそうな顔をするとドライヤーの音も消えていた。 「兄さん、あまり月坡を困らせないでよ?」 いままでの行為をみていたかのように星玻はドア越しの儘でそういうと、今度は冷たくこういう。 「ああ、ボクが来て、邪魔だなんていうのもなしだからね?ボクがこの家にくるのは十年前から決まっていたことなんだからさ」 星玻はいいたいことだけいうとさっさと脱衣場から出ていってしまった。僕はというと体温が一気に下がり、誰もいない脱衣場の方をみた。  

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