僕の異変にいち早く気がついたのは、色だった。気を抜くとすぐに意識が奪われそうになる。心が冷たく凍りついただけなのに、僕の身体はまったく自由に動かせれなかった。 そして、色の胸板に倒れ込むようにうずくまった僕に母さんが立ち上がった。星玻も同時に立ち上がるのがみえて、僕はまた母さんに怒られるんだろうなと思うと泣けてきた。そのせいか、周りがぼんやりとしてモノが二重にみえる。情けないなと思いながら色をみるが、色がなにをいっているのかまったく理解できなかった。身体は先よりも冷たく凍ったように冷たくなっていた。 暫く経っても母さんの怒鳴り声も星玻の呆れた声も聞こえてこなかった。近くにいる色の声も聞こえなくなって、無音が続く。そういえば、色の体温も触れられている感覚もないことに気がつく。変な感覚に視線だけで周りを伺うと、星玻がどこかに電話をしていた。母さんは慌てて上着と車の鍵を持ってきている。その間、色は僕になにかをいっているようだがまったく理解できなかった。もう一度いって、と声をだそうにもうーうーとしかいえず、身体もまったく動かないからイライラだけが募った。 電話を終えた星玻がなぜか僕と色の上着を持ってきて、色と僕にかける。色になにかをいっているようだが、僕には理解できない。どうしてココまで理解できないのか不思議だったが、星玻が僕の前髪をかき分けてくれたのはどうにか解った。 パタパタと廊下を走って、玄関に向かっているのは解るが、視界はぼやけて二重の儘だった。泣いているのかソレすら解らず、僕は色に抱き抱えられた儘母さんの車に乗った。車が急発進して、十分くらい動いたところで車は停車する。真っ白な大きな建物がみえたが、僕の意識はココでぷっつりと途絶えてしまった。