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第11話 悪夢

  次、僕が目覚めたところは真っ白な天井と真っ白な壁に囲まれた場所だった。身体は拘束され、両手首に幾つもの針が刺さった後とその手の甲に突き刺さった点滴の針が痛々しくみえた。 口元に覆い被さる透明な容器みたいなモノが邪魔で外そうと試みるが、拘束された手足と身体ではどうすることもできなかった。 また、消毒の毒々しい臭いにココが病院であることは理解できたが、どうして僕がこんな状態でいるのかが理解できなかった。コレまで大きな病気は一度もしたことはない。持病も持ってないし、遺伝も持ってない。色が心の病気にかかって以来の病院で僕の中に大きな不安が過った。 色と同じ心の病気? 僕がそう思ったのも仕方がなかった。いまの僕の状況は色のときとそっくりなのだ。口元にある透明な容器みたいなモノ以外は。 そう思うと一気に不安が爆発する。僕は半ば、半狂乱で手足をばたつかせ、身体を動かそうするが拘束された手足と身体ではどうすることもできない。 「………や、………たすけて………いろ……!」 僕は病気じゃないと叫びながら、手足をがしがしと無理矢理動かしていたら、扉から看護師が入ってきて僕を取り押さえようとする。ひとりでは埒があかないようで、応戦の看護師が数人入ってきた。 「………や、………さわらないで、………たすけて、………いろ……!」 視界に入ってくる数人の手に怯えて、僕は無意識に色の名を口にする。ソコに慌てて入ってきた星玻の姿などなかったように、僕はタダ必死で色の名を呼び続けた。 ほかの看護師が医師をつれてきたのか、僕の身体になにか冷たいモノを宛がう。星玻に向かって医師はなにかをいったらしいが、僕の耳には入ってこなかった。ソレだけ、いまの僕はパニックに陥っていたのだろう。 星玻は医師になにかをいった後と部屋からでていった。その医師は取り押さえられた僕になにかをいっているようだが、僕はまったくその言葉が聞こえてこなかった。こないというところで、はたりと気がつく。すべてが無音で、なにも聞こえていないことに。 しんしんと雪がつもるあの音に似て、僕の世界からすべての音が消えていた。 「…………いろ、………きこえない………、音が、………声が………、………きこえない………!」 たすけてと叫んだら、扉の向こうから息を切らせた色の姿がみえた。看護師が色になにかをいっているようだが、僕には聞こえない。色が僕をみて、僕は必死で色の名を呼んだ。 取り押さえている看護師と医師がなにかをいって色にもなにかいっているようだが、僕の耳にはなにも届いてこなかった。腕にチクリとした痛みが少し走って、凍ったように身体が冷たくなる。 その冷たさが怖くって、僕はさらに暴れた。色に助けを求めて、手足を拘束している革紐を引きちぎろうとしたときだった。冷たく凍ったような身体に温かいモノが流れ込んできたのは。 そう、色が僕の身体に触れてきたのだ。色に握られたところからどんどんと温かいモノが流れ込んできて、アレほど不安だったことも怖かったこともなかったように、そして、僕の身体から自然と力が抜けていった。医師がなにかをいっていたが、僕には聞こえていないからゆっくりと目蓋を綴じた。  

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