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第13話 現実
「月坡、アンタね………」
そう呆れた声を母さんがだすのも無理もない。引っ越した翌日から、僕は色の傍を片時も離れようとしないのだ。お風呂もご飯も、寝るのもトイレもずっと色の後をついて廻っている。大学もずっとべたべたとまとわりついて離れようとしない。色はとても嬉しそうだが、ソレを随時みせられている母さんにしたらもうお腹が一杯で胸焼けしそうなのだ。
「怖い夢をみたのか知らないけど、ちょっとは色くんから離れなさいよ」
「嫌!……色はイイっていったモン!」
そうでしょうというと、色はチュッと口端にキスをしてくる。くすぐったいような甘いキスにお返しとばかりキスを返していたら、母さんが僕の後頭部を軽く打った。
「痛いな!なにするの!」
振り返って怒鳴ると打った方の手になにかを持っていた。よくみると僕宛の手紙で、差出人は十年前に別れ離れになった双子の弟、星玻からだった。母さんはソレを手渡しながら、もう一度呆れる。
「アンタ、この十年、星玻とまったく連絡取ってなかったの?たったふたりきりの兄弟でしょう?」
母さんがそういうのは、色はもう僕と兄弟というよりも僕の恋人だからだろう。色もソコら辺は嬉しいらしく、母さんに尻尾を振っていた。
「だって………」
バツの悪い顔をして口籠る。歯切れが悪いのは当然いまも星玻のことが好きだからだ。怖い夢をみたからといっても、そう簡単に色に心変わりできるハズもなく、結局宙ぶらりんで色を傷つけている。
「ほんとう、アンタって昔から星玻大好きよね。色くんいるんだから、星玻のことイイ加減諦めたらどうなの?」
母さんの意外な発言に僕が驚いていたら、色までもが僕にこういう。
「………おれ、だけじゃ………だめ……?」
「ダメ……じゃない──、って!!なんでふたりとも知ってんの!!」
密かに隠していた想いを母さんと色が知っていて僕は叫ぶが、母さんも色も呆れた顔をする。
「知ってるもなにも、アソコまであからさまだったら誰でも気がつくでしょう?」
母さんはそういい、言葉を続けた。
「別れ離れになるからって無理矢理星玻にキスまでして貰って、ほんとうどんだけ好きなの?星玻、優しいから困りながらでもキスしてたでしょう?」
「えっ!!ウソ、ソコまで知ってんの!!」
「当然でしょう?星玻、当時好きな子いたのに、ほんとうかわいそうだったわ。アンタ、あの子のファーストキス奪っちゃってんのよ、解ってる?」
母さんがしみじみ腕組みをして頷くと、色までこういうのだ。
「………おれと………してるとき、………いつもかんがえてる……」
ほしはほしはってと母さんに報告するように色がいうから、僕は慌てて色の口を手で塞いだ。
「──だあああああっ!!」
恥ずかしいというよりも惨めな感じになって、僕の目尻に涙が浮かぶ。当然、母さんは溜め息を吐き捨てて呆れていた。項垂れた僕の頭をぺちぺちと叩きながら、母さんは「兎に角、手紙読みなさい」というのだった。
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