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第15話 甘い果実
あの夢が正夢だったかのように、星玻は僕らと一緒に暮らすことになった。流石に十年前から決まっていたことではなかったが、母さんは星玻を引き取りたいと父さんにお願いしにいったらしい。この十年間音信不通だと思っていたのに、母さんはちょくちょく星玻の様子をみにいっていたようなのだ。
星玻に手を引かれて移動する最中に簡単にそう説明されて、僕だけが知らなかったことに酷く傷つけられてしまう。色も知っていたのかなと後ろを振り返ろうとすると、星玻にこう囁かれるのだ。
「ボクと兄さん、どっちがすき」
と。
僕は当然星玻のことが好きだから顔を真っ赤に染めて、「星玻」と応える。ふいにそう聞くのは反則だという顔をすると、チュッと軽くキスをされてさらに戸惑ってしまった。こんなふうにいちゃいちゃと恋人のようなことをされたら、もう僕だけが知らなかったことはどうでもよくなっていた。
早く星玻に触れられたいという気持ちがどんどん前にでて、星玻に準備された部屋についたら、簡単に準備されたベッドの上に自ら上がるほどだった。続きをしようという星玻の言葉がやけに鮮明に脳裏に残っていて、僕は自ら星玻にキスをする。
キスの合間に挟まれる溜め息と星玻の言葉が僕の理性を呼び起こす。嫌だった?と僕が首を傾げると星玻は首を横に振った。
「違う。月坡がまだボクのことを好きでいてくれて嬉しいんだ」
「……どうして?」
「どうして?って、ボクだけずっと想っていただけならとても悲しいでしょう?」
「ずっとって?」
「ん?この十九年間だよ」
「えっ?」
星玻にはほかに好きな子がいたんでしょう?とベッドの上で星玻と向き合う形で僕がそう聞くと、星玻はこういう。
「そんな子いないよ。ボクが愛してるのは昔もいまも月坡だよ」
星玻はそう答えて軽くキスをすると、ソレで固まってしまた僕にまた軽くキスをした。啄むようなバードキスは少しこそばい。
「……でも、十年前、僕とキスをしたとき困った顔をした………」
漸く星玻のキスに慣れ、そういうと星玻はクスクスと笑って応えた。
「そりゃそうでしょう?あのときキスをしたら、もうお別れっていう意味じゃない?ボクのこと忘れてさ、違う人のところへいくって思うじゃない?」
星玻はゆっくりと何回も軽くキスをして、ボクのこともう忘れたいんだと思ったという。そんなことないのにとそういう顔をすると、だって、兄さんとこういうことやこうこともしてたんでしょう?と乳首をまさぐられて、下半身を軽く掴まれた。
色との性情をこうこともあからさまにされて、こういうふうに言葉にされたら、急に星玻に申し訳ない気持ちになって後ろめたくなってしまう。
「月坡、優しいから流されただけだよね?コレからはボクがいるんだから、こういうことはボクだけとしよう?」
「星玻とだけ……?」
「そうだよ。月坡はボクのことがすきでしょう?ボクも月坡のこと愛してるんだから」
当然でしょう?と小鳥のように囁かれ、ベッドに押し倒されて組み敷かれると頷くしかない。だが、どうして、そんなにすらすらと恥ずかしいことを平気でいえるのか、物凄く不思議だった。色でもソコまでいわれたことがなく、僕の許容範囲内で処理しきれないこともあって、僕はソレ以上なにも考えられなかった。
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