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第18話 好きなのは?

  「ねぇ、星玻?」 「ん?」 ふたりの友人の前で聞くのは恥ずかしいが、こうやってキスをしているところまでみられているから勇気をだして訊く。 「ぼ、僕のどこが……好き!」 聞いた僕の方が顔を真っ赤にして、星玻はけろっとした顔で応じるのだ。 「月坡のこの困った目でしょう。月坡のこの悩ましい唇でしょう。月坡のこのへの字になる眉毛でしょう。ぱっちりとした長い睫毛に、鼻筋が通った小さな鼻、そして、きめ細かいこの肌………」 「………ほ、星玻………」 「ん?」 応じてくれるのはイイが、どうして、ひとつひとつその場にキスを落としていくのか、解らない。くすぐったいこともあって、途中で星玻を停止させたら星玻が首を傾げた。 「どうしたの?聞きたくないの?」 「……き、聞いたけど、僕の顔以外では、…どこが好きなの?」 コレ以上星玻にキスをされるとキャパシティオーバーでショートしそうな頭でそう返すと、星玻は僕の手を掴んだ。 「そうだね♪この丸みがなく細ばった親指に、少し中指の方に曲がった人差し指に……」 「ちょ、星玻、た、たんまっ!!」 顔のパーツのときのようにまたその場その場にキスを落とす星玻に、もう片方の手を押さえて制止させる。恥ずかしいというよりも嬉しいが勝って、変な顔になっているのが解るが、この場でソレをされると星玻のペースになる。許容を超えた頭はもう真っ白で星玻にきゅんきゅんいっている。 「なに?待ってが多いよ。月坡はこういうふうにキスをされるのが、きらいなの?」 たんまといったのに、星玻は押し進める。中指にキスをし、薬指にキスをした。最後に小指にキスをすると、僕の足首を持ち上げる。股を開かされるように持ち上げるから、僕は焦った。 「ココじゃ、ヤだ……!」 「なにが?ねぇ、月坡はなにを考えてんの?」 もしかして、ココでするとでも思ったの?ボクがボク以外に月坡のあんなところやこんなところを、みせると思った? 星玻にそう耳元で囁かれて、僕は一気に茹でタコになる。ぷしゅーと頭から湯気が吹きだしているのかと思うくらい、顔が熱く、耳まで真っ赤だった。 「ふっふ、冗談だよ。この続きは帰ってからね♪ボク、網川教授に呼ばれてるからいくね♪」 そういうと足首を離されて、僕の額にキスを落として去っていく。あっけらかんとした顔で「ソコのおふたりさんもまたぁねぇ♪」と軽快に挨拶していく星玻に、その場で一緒にいた友人ふたりも「あ、じゃあ、俺らもいくな………」とそそくさと僕から離れていってしまった。僕からどうして顔を背けるのかが解らなかったけど、穴があったら入りたいという衝動にかられていたらそう深く考えなかった。 星玻は心臓に悪いよなと火照った顔を手扇ぎで冷ましていたら、背後から声がかけられる。声からしてすぐに誰かは解るが、頭に登った熱がまた一気に上がったことは理解できなかった。 「………つき、……は………」 「ん?どうしたの?」 平然そうな態度でそう訊くと色は困った顔で僕の横に座ってもイイのか、狼狽える。僕に触れるなと星玻にいわれてからまったく触れてこようとも近寄ろうともしない色。ソレほど僕に嫌われるのが嫌なのかと、可哀想になる。隣に座ることくらいで嫌わないよというと、安心したように僕の横に座る。 大きな身体を小さくしてちょこんと座る色は可愛いとしかいえない。遠慮がちにひとひとり分の隙間を空けるところも可愛いとしかいえない。 色はもじもじと自分の指を弄って、僕に聞こえるか聞こえないかギリギリの小さな声でこういう。 「………おれは………、そういう、やさしい………つきはが…、すき………」 「うん、知ってる」 僕は色のそういうところが好きでにっこりと笑うと色が顔を伏せてしまった。相当不安なんだと無意識に色の頭を撫でて、「不安になったらすぐにおいでっていったでしょう?」というと、色は「………つきはは、……ほしはのこと、……すきでしょ……」と悲しそうな顔でそういう。 「そうだけど、色は僕がいないと物凄く不安なんでしょう?」 色は無言で頷くが、僕に触れようとはしない。僕に触ってくれるだけで嬉しいという顔で我慢しているようだ。こういうところも好きだなと思ったら自然と笑みが溢れて、胸の奥に温かいモノが流れ込んでその奥がぎゅっと絞めつけられるような感覚が走った。色に触れられたい。そう思っている僕がいてどんどんと胸が苦しくなった。 僕は星玻のことが好きで、いまは星玻と付き合っているのに。ソレに、アレほど星玻に僕の好きなところを教えて貰ったのに、色の温もりが欲しくって堪らない。 そして、僕の心は気がつくのだ。僕の好きところに星玻はキスをひとつずつ落としたのに、僕が好きだという言葉は一言もいわなかったことに。 なんで、好きっていってくれないんだろう。 そう思うと僕も不安になって、色の優しさに甘えてしまう。 「ね、色、ぎゅってしてイイ?」 僕は星玻が好きで好きで堪らない。星玻も僕のことを愛してるっていってくれる。だけど、いまはまったく心がほわほわとしてなくって、ぎゅぎゅと悲しい音をだしていた。 「………ゴメン、いまだけだから………」 そう呟いて僕は色にぎゅっと抱きついた。色の心臓の音を聞くのはひさしぶりだ。そして、なぜか星玻に抱き締められるよりもドキドキしていた。 ソレなのに、いままでの不安が一気になくなってほんわかした気持ちが流れ込んできて、温かい気分になっていた。  

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