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第21話 修羅場

  声が渇れて、精液も渇れかけたときだった。玄関のドアが開く音がして、僕が星玻に犯されている横で泣いていた色が立ち上がった。 母さんになにかあってはいけないとでも思ったのだろう。僕も母さんにこんな姿をみられたくなかったから色を止めなかった。といっても、僕の頭は真っ白になっていて、ソレどころではなかったが。 廊下で母さんの声が聞こえた。星玻にも聞こえているようだが、星玻は止めようとしない。母さんが星玻に敵わないことは確認済みだからだろう。 ぱたぱたとリビングに向かってくるスリッパの音が止んで、色が上手く誤魔化してんだと安心する。あと数時間我慢すれば解放される。僕は星玻が好きなハズなのに、そういうことしか浮かばなかった。 僕を無茶苦茶に抱く星玻に心が冷え、氷のように冷たく凍りつく。僕の好きはなんだったんだろうと思うくらい、いまは星玻が恐かった。 再びぱたぱたと動きだすスリッパの音が、こっちに向かってくる。どうして?と思う間もなく、リビングのドアが開き、星玻が僕から離れていくのがコマ送りのようにゆっくりとみえた。 あんな強張った星玻の顔は初めてみた。 なにやってんだ!と星玻を怒鳴る声に聞き覚えがある。十年前に母さんと別れた父さんの声だ。 色が痙攣を起こしてひくついている僕の身体を抱きしめてきたとたん、恐かった感情が表にでて僕は色の腕の中で泣いていた。母さんも僕に「ゴメンね、遅くなって」と謝っていたが、どうして僕に謝るのか解らなかった。 父さんは星玻を掴んで、泣いている僕に「助けにくるのが遅くなって、悪かった」という。父さんも母さんもなんで僕に謝るのか、僕にはまったく理解できなかった。 できなかったけど、母さんが傍にいて、父さんが星玻を叱っている最中、僕は色の腕の中で大いに泣いていた。頭がぼんやりするまで泣いたら、恐かった感情もすべて流れ落ちたのか、僕の心は少しばかり温かくなっていた。 僕を落ち着かせるためとこの惨劇を洗い流すため僕は色に風呂につれていかれたが、足腰が立たない上星玻に散々腹を蹴られたことで指一本動かすのもしんどかったから、色に後処理と身体を洗うのを手伝って貰った。僕が痛がる度、色がゴメンと謝るけど自業自得だと僕は思っているから、なんだか色に申し訳ない気持ちになった。 「色、ゴメン………、嫌な思いばっかりさせて……」 僕がそういうと色は首を振って、つきはがぶじでよかったといってくれる。どうしてココまで、色は僕に優しいんだろうと泣いたら、色が困った顔をして色まで泣きだすから、母さんが吃驚して風呂場まで覗きにくる始末だった。 なんでもないよと鼻声で応えて、色も鼻水を垂らしながらだいじょうぶと応えていた。兎に角、落ち着いたらリビングにいらっしゃいと言い残して、母さんはリビングに戻っていった。 大の大人がふたり大泣きするのは恥ずかしいことだと、顔を見合わせて笑って、冷たかった心がまた少しだけ温かく感じた。 「色、ほんとうにありがとう………、僕、なんで色のこと好きじゃないんだろう………」 アレほど嫌なことをされて、怖い思いして、心が冷たく凍りついたのに、心が少し回復しただけでもう星玻のことを許してしまっている。星玻が好きで好きでたまらないと、僕の頭がいい始めるのだ。 「色のこと、大事だと思っているのに、星玻のことが好きでたまらないんだ……」 心が痛いと泣くと色は優しく頭を撫でてくれた。色が触れたところが熱く、愚かな僕はまた色を傷つけるのだった。  

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