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第22話 事実
お風呂から上がった僕らは母さんにいわれたようにリビングに向かった。星玻との行為がソコであったのに、どうして?と色は思ったようだが、僕は気にしてないよと強がった。ほんとうは心の片隅で星玻のことに怯えている僕がいるのに、僕は星玻が好きだということだけで、ソレに気づかないようにしていた。
リビングに入ると布団もあの生々しい現状もすべてなかったように綺麗に片づけられていた。僕が吐いた胃液も精液の臭いもなかった。
「………母さん?」
僕はソファに座っている母さんと父さんをみて、そして、星玻をみた。
母さんはイイからこっちに座りなさいと、父さんと星玻が座っている反対側のソファに座るようにいってきた。色は少し警戒していたようだが、僕が頷くと色は仕方なさそうに横抱きにした僕をソファまで運んでくれた。
「………えっと、母さん?どうして、父さんがココにいるの?」
十年前母さんと別れて再婚した父さんがココにいることに不思議がる僕に、母さんはひとつひとつ説明しだす。
「私たち、ほんとうは離婚してないのよ。父さんと別居してただけなのよ」
離婚したとばかり思っていた僕は、驚いた顔で母さんをみた。
「別居?」
僕がそういうと、父さんも無言で頷いた。
色が僕の隣に座ると僕の身体は無意識に色の膝に座り直していて、父さんがにこりと笑う。なぜ、父さんが嬉しい顔をするのか解らなかったが、星玻は不機嫌だったのは確かだ。
「ソレじゃ、父さんと再婚したあの人は…?」
「ああ、あの人、伯父さんの嫁さん。だから、再婚相手じゃなくって、父さんの妹。父さんの実家を継いだの、伯父さんだからさ」
父さんの隣に座る星玻が悪びる様子もなく、僕にそう答える。そう答えるということは、知らなかったのは僕ひとりだけになる。そんな僕に、母さんはこういうのだ。僕が勘違いしているならソレでイイような感じのことを。
「勘違いって、どういうこと?」
僕が呆れると母さんは当然のように応じる。
「その儘の意味よ」
「なに?つまり、母さん、父さんがいるのに浮気してたってことなの?」
陽香さんの再婚話を聞いていたから、僕はそういうと母さんがまた申し訳ない顔を僕にする。
「ゴメン、月坡。陽香さんは父さんの上司で、母さんの再従兄弟なのよ。ソレで、陽香さんが再婚する相手が陽香さんと父さんが勤めていた会社の社長令嬢で、色くんとそう仲がよくなかったのよね…」
「………?」
「つまりさ、母さんは浮気もしてないし、親戚の子を引き取っただけってことだよ」
星玻は簡潔にそういって、そうでしょうと母さんの顔をみた。アレほど、父さんに叱られ叩かれたというのに、反省のいろがまったくみえない。
「………そうなの?」
僕が色の方に顧みると色が頷く。色が心の病気で言葉を失ったことを考えると、そうなのかもしれないと思うしかない。
だけど、どうして僕には真実がなに一つ届いていなかったんだろうと首を傾げた。
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