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第24話 豹変
「ほんとう、勘がイイよね♪兄さんは♪」
どさくさに紛れて僕をわし掴みしようとした星玻は色にそういう。父さんと母さんがいるのに、星玻は僕になにをしようとしたんだろう。星玻の手の中で光るソレがハサミだと気がついたときには、星玻はまた父さんに叩かれていた。
「もう!父さん、痛いって!!もうしないっていってんだから叩かないでよ!」
父さんと母さんにハサミを奪われて、ソレでも反省してないというか、我が道を走る星玻は、ボクに傷がついたらどうするんだよ!と怒っている。そんな星玻に僕は愕然とした。
自己愛者。
そう気がついて、身体が一気に冷たくなった。星玻が愛してるっていっていたの星玻自身。鏡に映るようにそっくりな僕を星玻にみたててそういっていたのだ。
父さんと母さんが僕にいいづらいのも解った気がした。僕は純に星玻のことが好きなだけ。そう思って昼間のことがやたら浮き彫りになる。じゃ僕は星玻のどこに引かれたの?もしかして、僕も星玻と同じように自己愛者なのかと、疑わしいことが露になってくる。
「もしかして、僕の好きもそうなの……?」
そう聞かずにはいられず、星玻をみると「知らないよ、そんなの。勝手にすきだって思ってるだけじゃないの?」そう答える。
自分のことにしか興味がない星玻は「もうイイでしょう?」という顔で立ち上がり、「ボクは眠いからもう寝る。ボクはボクのすきなようにするから、月坡も月坡のすきなようにすれば」というと、さっさとリビングからでていってしまった。
取り残された僕と色、そして、父さんと母さんはもう開いた口が閉まらない。呆れるというか呆けるしかなかった。
「こんだけかき廻しておいて、ゴメンの一言もないの?」
星玻の高慢ぶりはいまに始まったことじゃないとは思うが、少しは悪いと思って欲しかった。父さんと母さんは項垂れて、「月坡、そういうことだから星玻とコレ以上関係を持つのは止めなさい」と母さんは真剣にいう。僕は結局、星玻にフラれて丸くおさまったようにみえた。父さんの一言がなければ。
「月坡、いまさらこういうのはアレだが、ココまできたら真実を知るべきだと思う。お前のその星玻好きはな、夜な夜な続いた星玻の呟きによるモノなんだよ」
「………?………どういうこと?」
母さんと僕が顔を見合わせて父さんに訊く。父さんは渋る顔で応じた。
「当時、お前、星玻と一緒に寝てただろう」
「うん、そうだね」
僕と母さんはうんうんと顎をひく。
「その時、星玻はな、鏡に映った自分をみながら"ああ、星玻好き♪星玻大好き♪"って、ソレは何度も何度も囁いていたんだ」
「………うん、ソレで?」
また僕と母さんは顎をひいて、父さんをみた。
「するとな、どんどんとお前が星玻を好きになっていってな、父さん恐くって星玻を月坡から引き離したんだ」
というのだ。ソレって、まさか、催眠効果っていうモノ?
母さんと僕は顔を見合わせて、まさかねぇと笑うのだが、父さんは真顔でこういうのだ。
「だって、月坡、お前は色羽くんのことが好きだっただろう」
と。
僕と母さんはハア?という顔で父さんをみて、色の方に顧みる。
色は恥ずかしそうに昔何度か僕と遊んだことがあるという。だが、僕の記憶には色との記憶がまったくなかった。
いつ?と訊くと、保育園に入る前だという。そんな小さい頃の記憶なんてあるハズがない。だが、母さんは思いだしたらしく、もしかしてあの頃と父さんに訊く。父さんはそうそうと母さんと父さんしか知らない記憶を共有して合点していた。
「あの、僕にも解るような会話の仕方をして欲しんだけど?」
僕が父さんと母さんにそういうと母さんはニヤニヤして、こういうのだ。
「アンタのファーストキスの話よ♪」
と。
「ぼ、僕のファーストキス?僕のファーストキスって星玻じゃないの?」
そう声を上げると、父さんは「色羽くんだよ」とソレはもう真面目な顔で応えた。
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