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第31話 罰

  色と病院から帰ってきた僕は流石に疲れたのかリビングのソファでうとうとしていた。 差し迫るところ、キャパオーバーというところだったらしい。色は毛布を持ってきてくれたが、僕の傍に近寄ろうとしなかったから、僕はわざと体調が悪い振りをした。 「色、トイレいきたい。抱っこして……」 甘えるようにそういうと色は慌てて僕を抱っこしようとするが、僕は全体重をかけて色をソファに押し倒した。驚く色は僕から離れようとするから、覆い被さって「こうしないと死んじゃう」と色を脅迫までして、色の動きを制止させる。どこまでも僕に甘い色は大人しくされるが儘で、僕はイイ子と色の頭を撫でてやった。 色の心臓が早鐘のように打ち鳴らされているが、僕はお構いなく、色に甘える。今日は疲れたねとか明日はこうしたいなとか、そんな他愛ない会話をかわして、色の上にうつ伏せてみた。色は返事の代わりに僕の頭を撫でる。色に頭を撫でられると次第にほんとうに眠くなってきて、僕は色の上で寝てしまった。 どのくらい経ったのだろうか?うつろうつろと半分覚醒しかけた意識の中、父さんと母さんの話し声が聞こえてくる。色も起きているらしく、父さんと母さんの会話に頷いていた。 「……………だけでも、引き取りにいってくるわ」 「………ああ、葬儀をだすにしても遺品くらいは埋葬してやりたいからな………」 「そうね。悪いけど、色くん、月坡のこと頼んだわよ」 誰の葬儀だって?遺品くらいってなに? 「………ほんとう、あの子には………ふり廻されっぱなしで…………ほんとう………」 母さんが涙ぐんでそういうと、父さんが「星玻もこんなふうに親不孝をするつもりはなかったんだと思うぞ。アレは不運だったとしかいいようがない。誰も防げれなかったんだ………」と母さんの肩を抱きしめてやるせなさを押し殺していた。 会話から解ることはひとつ。星玻はもういないっていうこと。どうしてそうなったのか解らないが、そういうことというだけは理解できた。 心臓が早馬のように暴れていた。どくどくと不整脈のように心音がとぶ。耳が痛くって、頭が割れそうなくらいガンガンとしていた。 「………ねぇ、どういうこと……?」 僕はどくどくと押し寄せてくる不安を押し止めて起き上がった。 父さんと母さんは驚いた顔で僕をみるが、僕の額から大量の汗と荒い呼吸に気がついて、僕にかけよってくる。 「月坡、なんでもないわ。イイから落ちついて、お願いだから」 心拍数が上がったことで血圧が上がったのか、身体に重たい石が乗ったような感覚に陥り、僕は色の上に沈む。 父さんが慌てて僕の部屋にいき、酸素マスクを持ってきた。その間、母さんは病院に電話しているようだったが、僕はその儘意識を手放してしまった。 色がなにかいっていたようだったが、星玻のことを考えると心臓が押し潰されそうで色の言葉がまったく入ってこなかった。  

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