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第32話 罪

  点滴がボタボタと落ちる音で再び、覚醒した僕は飛び起きた。 「星玻……」 暗い病室で僕の声だけが木霊して、看護師と色が病室に入ってきた。 「ココは………」 そう聞く僕に看護師が病院よと応え、色がめをさましてよかったという。 アレは夢だったのかと思うくらい頭がぼんやりとしていて、僕は色に聞く。 「母さんは?」 「……そと………いる。すぐ、………くる………」 僕が直ぐ意識を回復したことに、色は安心したのか涙ぐんでいた。 「ゴメン、心配かけて。僕、どうしたの?」 そういうと、看護師が少し無理をしちゃったのよと僕が長時間病院にいて気疲れをしたんだという。そうだったけと、色をみたら、色はこくこくと頷いていた。 「もしかして、病院で倒れたとか?」 家にちゃんと帰った気がしたけどと、冴えない頭で考えてると母さんと父さんが病室に入ってきた。看護師は医師をつれてくるからといって、病室をでていった。 母さんと父さんは物凄く青い顔をしていて、僕が倒れたのは病院ではなく、家だと気がつく。同時にふたりの会話も思いだして、僕はおそるおそる口を開いた。 「星玻……、死んだの………」 確証もなければ、証拠もない。タダ、星玻がもう生きていないという実感だけがソコにあって、父さんと母さんにそう聞く。 「…………そうよ。星玻、アンタが入院した日に急にアメリカに留学するって。下見にいくからってアンタの手術の日に勝手にいっちゃったのよ」 母さんがソコまでいうと、今度は父さんがつけ足すようにこういうのだ。 「留学の話は前々から聞いていたんだ。網川教授の推薦でいくって話はな。だが、もう少し先だと思ってたんだ。こんな急にいくなんて思わなくって、兎に角、下見はしておいた方がいいっていったらじゃみにいってくるって勝手に日取り決めて………」 「経由のハワイで飛行機事故にあったのよ。星玻が乗っていた便が………」 「じゃ、遺品がっていうのは………」 「そう、遺体が見つからなかったのよ。海の上だったから」 『せめて遺品くらいは………』 ぐるぐると頭が廻る。僕の頭が、思考を停止させようとしているのだろう。コレ以上、考えるなと。 「………ゴメン………、………僕のせい……だ………」 そう口にしたとたん、色が僕を抱きしめた。そんなことないといって、僕がなにかをいおうとする度にぎゅうぎゅうと強く抱きしめる。そんな色の肩が小さく震えていることから、僕はなにもいえなくなってしまった。 母さんも父さんも誰が悪いとかそういう言葉をいわず、タダ黙って泣いていた。僕に気を使って、泣きたいのをずっと我慢していたんだと思うと、逆に悔しい気持ちになって、僕は泣けなかった。  

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