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第36話 ソレから
「ちょっと、兄さん、月坡から離れてよ!」
なぜか、リビングで川の字になって寝ることになった僕らは星玻に振り廻されている。
「いや!………つきは、おれの!」
両側から抱きつかれた格好になっている僕の姿をみて、母さんが溜め息をつく。
「月坡、アンタ、なに、星玻までタラシ込んでんのよ!」
「違うもん!月坡はボクのことが大好きで仕方がないだけだもん!」
だから、母さんは黙ってて!となぜか、星玻がキレる。実に有り難いことなんだけど、僕が好きなのは色だからと星玻にいうと、兄さんが好きならボクのことだって好きじゃないか!と怒るのだ。
どういう思考でそうなるのかは解らないが、星玻は月坡大好き♪と僕にキスをする始末。色がブチ切れそうな顔で怒るのを我慢しているようで、おれもつきはすき♪と、取り敢えず、消毒がてらか解らないけど僕にキスをする。そうすると、もう!なんで真似すんの!と色を睨みつける星玻の顔が怖い。
「なんなの、この状況は!」
と、僕が嘆くと、母さんがアンタが悪いんでしょうと物凄く冷たい目で僕をみる。詰るようなその目はまさに星玻とどんかぶりで、ああ親子だなとしみじみと思ってしまった。
「月坡、そういうな。仲がイイのが一番だぞ」
そういって、ソファで熱いお茶を啜る父さんはもう既に誰よりも先に順応していた。しかしながら。
「あ~あ~星玻、今度月坡を傷つけてごらん。父さん、お前を殺して父さんも死ぬから」
と、星玻を脅迫する。そんな父さんも、ああ親子だなと思う今日この頃の僕だった。
空は多分青いんだろうが僕の心は複雑で、高く登る太陽も眩しんだろうが僕の身体はくたくたで、色とふたりっきりでいちゃいちゃしたいななどと真剣に考えてしまっていた。
トイレやお風呂まで一緒にいたがる星玻を僕は拒むことができず、だからといって、星玻に嫉妬する色を可哀想だとは思わない僕もいて、結局のところ僕のどっちつかずの中ぶらりんがこのふたりをますます不幸にしているには違いなかった。
そう思うのだけど、家族心中するよりかは平和的だと思っている辺りが、僕らの救われない理由なのだろう。色と星玻、天秤にかけるほどもなく、色に傾いている僕は大きな溜め息をついた。
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